「トヨタのセリカXXとスープラ、名前は違うけど一体どこが違うの?」 「セリカとスープラは似てるけど兄弟車なの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。トヨタのスポーツカー史を彩るこの二台は、多くのファンを魅了し続けています。その複雑なセリカとスープラの関係を理解するには、単にスペックを比較するだけでは不十分です。物語は、4気筒エンジンが主流だった時代に特別なエンジンを搭載して生まれたダルマセリカの派生モデルから始まります。
また、なぜセリカXXの北米仕様がスープラと名乗ったのか、その背景には意外な理由がありました。A60からA70へと続くモデルチェンジの歴史を紐解けば、最高速度や馬力といった性能の進化だけでなく、両車の立ち位置の変化も見えてきます。往年のファンには、セリカXXがメカドックに登場した勇姿も記憶に新しいかもしれません。
現在でもその人気は衰えず、中古車市場でも注目を集める両車。この記事では、セリカXXとスープラの違いについて、その誕生の経緯からスペック、そして現在に至るまでの歴史を、専門用語を避けて分かりやすく解説します。
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セリカXXとスープラの名前の由来と歴史的な関係
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各モデル(A60、A70など)のスペックやエンジンの違い
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セリカXXがスープラへと進化した背景
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中古車市場での両車の特徴や選び方のポイント
セリカXXとスープラの違いは名前だけ?歴史を解説
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そもそもセリカとスープラの関係とは?
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セリカとスープラは似てるけど兄弟車なの?
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前身ダルマセリカは4気筒エンジンだった
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なぜセリカXXは北米仕様でスープラに?
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漫画に登場したセリカXXとメカドックの関係
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セリカXXのエンジンとスペック
そもそもセリカとスープラの関係とは?
セリカXXとスープラの関係を一言で表すなら、「当初は同じ車の、国内外における名称違い」です。トヨタは1978年、当時人気だった日産フェアレディZに対抗するモデルとして、セリカの上級グレードを開発しました。これがセリカXXの始まりです。
このモデルは、日本国内では「セリカXX(ダブルエックス)」という名前で販売されました。一方で、主な輸出先であった北米市場をはじめとする海外では、「スープラ」という名称が与えられたのです。つまり、初代と2代目のセリカXXは、海外では初代・2代目スープラとして販売されていた、基本的には同じ車両と考えることができます。
しかし、1986年に大きな転機が訪れます。3代目(A70型)へのフルモデルチェンジを機に、日本国内でも「スープラ」という名称に統一されました。この時から、セリカの名前から完全に独立した、トヨタの新たなフラッグシップ・スポーツカーとして「スープラ」の歴史が本格的にスタートしたのです。
以上の点を踏まえると、セリカXXはスープラの前身であり、A70型が登場するまでの日本国内専用の名称だった、というのが両車の関係性の答えになります。
セリカとスープラは似てるけど兄弟車なの?
「兄弟車」という言葉は、一般的に同じプラットフォーム(車台)や主要な部品を共有して開発された異なる車種を指します。この定義に当てはめると、セリカXX(スープラ)と「セリカ」の関係は、兄弟車というよりも「派生関係」と表現するのがより正確です。
セリカXXは、前述の通りセリカ・リフトバックの車体をベースに、ホイールベースや全長を延長して直列6気筒エンジンを搭載できるようにしたモデルです。あくまでセリカという母体があり、そこから生まれた上級モデルという位置づけになります。
一方で、本当の意味での兄弟車関係にあったのは、1986年に登場した初代スープラ(A70型)と2代目「ソアラ」です。この2台はプラットフォームやサスペンション、エンジンといったメカニズムの多くを共有しながら開発されました。ラグジュアリー志向のソアラ、スポーティ志向のスープラ、という形でキャラクター分けがなされていたのです。
ちなみに、同時期のトヨタのスポーツカーである「MR2」は、セリカやスープラとは全く異なる成り立ちを持っています。初代MR2はカローラ系のコンポーネントを流用したミッドシップ、2代目はFFセリカのコンポーネンツを流用したミッドシップであり、直接的な兄弟関係にはありません。
前身ダルマセリカは4気筒エンジンだった
セリカXXがなぜ特別な存在として登場したのかを理解するためには、その前身である初代セリカの存在が鍵となります。1970年に登場した初代セリカは、その特徴的なスタイリングから「ダルマセリカ」の愛称で親しまれました。この初代セリカから2代目に至るまで、搭載されていたエンジンは直列4気筒が主体でした。
4気筒エンジンは、コンパクトで軽快な走りを実現する上で優れた選択肢であり、当時のスペシャルティカーとして十分な性能を持っていました。しかし、トヨタが次なるターゲットとして見据えたのは、北米市場で絶大な人気を誇っていた日産フェアレディZです。フェアレディZの大きな特徴は、パワフルで滑らかな回転フィールを持つ直列6気筒エンジンを搭載している点でした。
そこでトヨタは、フェアレディZと同じ土俵で勝負するために、セリカをベースとしながらも直列6気筒エンジンを搭載できる上級モデルを開発します。これがセリカXXの誕生に繋がりました。つまり、4気筒エンジンが基本だったセリカシリーズの中に、初めて6気筒という強力な心臓を与えられた特別なモデル、それがセリカXXだったのです。このエンジン構成の違いこそが、セリカとセリカXXを分ける最も大きな特徴と言えます。
なぜセリカXXは北米仕様でスープラに?
セリカXXが海外、特に北米市場で「スープラ」と名付けられたのには、非常に分かりやすい理由があります。それは、「XX」という表記が持つ、現地の文化的な背景を避けるためでした。
当時のアメリカにおいて、「X」を重ねた表記(XXやXXX)は、映画の成人指定度合いを示すレイティング(等級)として一般に認知されていました。そのため、「セリカXX」という名称をそのまま使用すると、成人向けコンテンツを連想させてしまい、ファミリー層や一般消費者に対して良いイメージを与えない可能性があったのです。
このようなマーケティング上の懸念から、トヨタは海外輸出仕様の名称として「スープラ(Supra)」という新しい名前を選びました。「スープラ」はラテン語で「上へ」「超えて」といった意味を持ち、セリカを超える上級モデルであることを示すのにふさわしい言葉です。
このように、車名の違いは性能や仕様の違いから生まれたのではなく、文化的な配慮という極めて実用的な理由によるものでした。この判断があったからこそ、「スープラ」という名前が世界的に認知され、後の大ヒットへと繋がっていったと考えられます。
漫画に登場したセリカXXとメカドックの関係
1980年代に車好きの少年たちを熱狂させた漫画「よろしくメカドック」。この作品の存在が、セリカXXの人気を語る上で欠かせません。作中において、セリカXXは主人公である風見潤が率いるチューニングショップ「メカドック」のデモカーとして、そして彼の愛車として非常に重要な役割を果たしました。
物語の中で、セリカXXはノーマルの状態から様々なチューニングを施され、強力なライバルたちと数々のレースで激闘を繰り広げます。特に、ツインターボ化や様々な秘密兵器を搭載し、キャノンボール・トライアルなどのレースイベントで活躍する姿は、多くの読者に鮮烈な印象を残しました。
この漫画が描いたのは、単なるレースの勝ち負けだけではありません。仲間と共に知恵を絞り、一台の車を究極の形に仕上げていくという、チューニングの面白さや奥深さでした。その象徴的な存在であったセリカXXは、当時の若者たちにとって「憧れのチューニングベース車」としてのイメージを確立させます。
「よろしくメカドック」の影響でセリカXXを知り、その魅力に取り憑かれたファンは少なくありません。作品を通じて、セリカXXは単なる高性能なスペシャルティカーというだけでなく、無限の可能性を秘めた夢のスポーツカーとして、日本の自動車文化にその名を刻んだのです。
セリカXXのエンジンとスペック
セリカXXは、2世代にわたって販売され、それぞれに特徴的なエンジンラインナップを持っていました。その変遷は、モデルのコンセプトが豪華なグランドツアラーから、よりスポーティな方向へとシフトしていく過程を物語っています。
初代セリカXX(A40/50型:1978年~1981年)
初代モデルは、日産フェアレディZを強く意識したグランドツアラー(GTカー)としての性格が色濃く反映されていました。搭載されたのは、当時の上級車種であるクラウンなどにも使われていた、信頼性の高い直列6気筒のM型エンジンです。
特に2.6L(後期で2.8Lに換装)エンジンは、大排気量ならではのトルクフルな走りを実現し、長距離を快適に移動する高級スペシャルティカーというキャラクターを明確にしていました。
2代目セリカXX(A60型:1981年~1986年)
1981年に登場した2代目は、リトラクタブルヘッドライトを採用したシャープなデザインと共に、よりスポーティな路線へと舵を切りました。エンジンも高性能化が進み、多彩なラインナップが用意されたのが特徴です。
特筆すべきは、日本初のDOHC 24バルブエンジンとなった「1G-GEU」や、DOHCターボの「5M-GEU」の登場です。これらの高性能エンジンは、セリカXXを単なる豪華なクーペから、本格的なスポーツカーとしての地位へと押し上げる原動力となりました。
スペックで比較するセリカXXとスープラの違い
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セリカXXの最高速度は?馬力はどのくらい?
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A60からA70へ、スープラへの進化の歴史
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トヨタのスープラはなぜ人気があるのでしょうか?
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セリカXXとスープラの中古車市場での価値
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まとめ:セリカXXとスープラの違いを理解しよう
セリカXXの最高速度は?馬力はどのくらい?
セリカXXの性能、特に最高速度や馬力は、当時のスポーツカーの指標として多くのファンが注目したポイントです。
まず馬力についてですが、これは世代や搭載エンジンによって大きく異なります。 初代セリカXX(A40/50型)では、2.0Lモデルが125PS、最上級の2.6L(後期2.8L)モデルでは最高出力145PSを発生しました。これは、当時の国産車としては十分にパワフルな数値でした。
そして、スポーティ路線を強めた2代目セリカXX(A60型)では、性能が大幅に向上します。2.8L DOHCエンジンを搭載した「2800GT」は、最高出力170PS(後期型は175PS)に達しました。また、後に追加された2.0L DOHC 24バルブの「2000GT TWINCAM24」は、2.0Lながら160PSという高出力を誇り、人気を博しました。
次に最高速度ですが、メーカーによる公式な公表値はありません。しかし、当時の自動車雑誌などによるテストでは、A60型「2800GT」が200km/hを超える数値を記録したという情報があります。特に空力性能に優れたボディ形状とパワフルなエンジンにより、高速走行性能は非常に高かったと考えられます。
これらの数値は、セリカXXが単なるスタイリッシュなクーペではなく、確かな実力を備えたパフォーマンスカーであったことを証明しています。
A60からA70へ、スープラへの進化の歴史
1986年は、トヨタのスポーツカー史において非常に重要な年となりました。この年、セリカXX(A60型)は生産を終了し、その後継として全く新しいモデル、初代スープラ(A70型)が登場したのです。これは単なる名称の変更ではなく、車のコンセプトそのものが大きく進化した瞬間でした。
セリカからの完全な独立
A70型スープラの最大の特徴は、それまでのセリカの派生モデルという立場から完全に独立し、独自のプラットフォームを持つ専用設計のモデルとなった点です。これにより、設計の自由度が大幅に向上しました。
新設計のサスペンション
その象徴が、サスペンション形式の変更です。A70型スープラは、トヨタの伝説的なスポーツカー「トヨタ2000GT」以来となる、本格的な4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用しました。これは、路面追従性やコーナリング性能を劇的に向上させ、より高度な走りを目指すという開発陣の強い意志の表れでした。
パワートレインの強化
エンジンラインナップも一新され、3.0L DOHCターボ「7M-GTEU」を筆頭に、2.0L DOHCツインターボ「1G-GTEU」など、さらに強力なパワーユニットが搭載されました。特に1990年に追加された2.5Lツインターボ「1JZ-GTE」は、当時の自主規制値いっぱいの280PSを発生し、スープラを国産トップクラスのパフォーマンスカーへと押し上げました。
キャッチコピー「TOYOTA 3000GT」が示すように、A70型スープラはセリカXX時代のグランドツアラー的な性格から、世界と戦える本格的なピュアスポーツカーへと大きな飛躍を遂げたモデルと言えます。
トヨタのスープラはなぜ人気があるのでしょうか?
スープラが生産終了後も、そして新型が登場した現在も、世代を超えて絶大な人気を誇るのには、いくつかの明確な理由があります。
第一に、その圧倒的なパフォーマンスとチューニングの潜在能力が挙げられます。特に4代目スープラ(A80型)に搭載された「2JZ-GTE」エンジンは、鋳鉄製ブロックによる優れた耐久性を持ち、少しの改造で大幅なパワーアップが可能です。1000馬力を超えるようなカスタムも珍しくなく、この懐の深さがプロのチューナーからアマチュアの走り好きまで、多くの人々を引きつけてやみません。
第二に、普遍的な魅力を持つデザイン性です。A70型のロングノーズ・ショートデッキの古典的なFRスポーツカースタイルや、A80型の曲面を多用したグラマラスなフォルムは、時代を経ても色褪せることがありません。スポーツカーらしい、誰が見ても格好良いと思えるスタイリングは、人気の大きな要因です。
そして第三に、ポップカルチャーにおける影響力も無視できません。特に、世界的な大ヒット映画「ワイルド・スピード」シリーズでA80型スープラが主役級の活躍を見せたことは、スープラの名前を世界中に轟かせ、特に海外での人気を不動のものにしました。
これらの理由から、スープラは単なる高性能な車というだけでなく、カスタマイズする楽しみ、所有する喜び、そして文化的なアイコンとしての価値を併せ持つ、特別な存在として多くのファンに愛され続けているのです。
セリカXXとスープラの中古車市場での価値
セリカXXとスープラは、現在の中古車市場においても非常に人気が高く、その価値は年々上昇傾向にあります。ただし、両車にはそれぞれ異なる特徴と注意点が存在します。
セリカXXの中古車
セリカXXは、生産終了から長い年月が経過しており、流通している台数が非常に少ないのが現状です。そのため、希少価値が非常に高く、状態の良い個体は高値で取引されています。特に「2800GT」や「2000GT TWINCAM24」といった人気グレードは、コレクターズアイテムとしての側面も持ち合わせています。
購入時の注意点としては、年式が古いため、ボディのサビや内外装の劣化は避けられません。また、純正部品の入手は困難な場合が多く、維持には専門的な知識やショップとの繋がりが不可欠です。修復歴の有無を入念にチェックし、可能な限り整備記録が残っている車両を選ぶことが大切になります。
スープラの中古車
スープラは、A70型、A80型ともに高い人気を誇ります。A70型も旧車の領域に入りつつありますが、セリカXXよりは流通量があります。A80型、特にターボモデルの「RZ」は、映画の影響などから世界的に需要が高まり、価格が著しく高騰しています。状態によっては1,000万円を超える個体も珍しくありません。
スープラを選ぶ際も、修復歴やメンテナンス履歴の確認は必須です。特にチューニングされている車両が多いため、どのような改造が施されているか、それが適切に行われているかを見極める必要があります。部品の供給はセリカXXよりは良好ですが、それでも生産終了から時間は経っているため、購入後の維持費も考慮に入れておくべきでしょう。
いずれの車種を選ぶにしても、旧車やスポーツカーに詳しい信頼できる販売店に相談し、納得のいく一台を見つけることが、満足のいくカーライフへの第一歩となります。
まとめ:セリカXXとスープラの違いを理解しよう
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セリカXXとスープラは当初、同じ車の国内外での名称違い
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日本国内がセリカXX、海外の主に北米市場がスープラだった
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海外で「XX」が不適切な意味合いを持つためスープラと命名された
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1986年のA70型から日本国内でもスープラに名称が統一された
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A70型以降はセリカから完全に独立した専用モデルとなった
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セリカXXはセリカの上級派生モデルとして直列6気筒エンジンを搭載
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セリカXXの前身である初代セリカ(ダルマ)は4気筒エンジンが主体
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2代目セリカXX(A60型)はリトラクタブルライトが特徴的なスポーティ路線
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A70型スープラは本格的な4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用
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A80型スープラは名機2JZエンジンとゲトラグ製6速MTで高性能を極めた
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漫画「よろしくメカドック」での活躍がセリカXXの人気を高めた
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映画「ワイルド・スピード」での登場がA80スープラの世界的名声を確立
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セリカXXは希少価値が非常に高く、中古車市場では高値で推移している
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スープラも全世代にわたって中古車として高い人気を維持している
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両車はトヨタのスポーツカー史を語る上で欠かせない伝説的な存在