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グロリア歴代人気の軌跡と選び方

夕暮れ時の海岸線を走る、歴代の日産グロリアの車列。手前から古いモデル、奥に行くにつれて新しいモデルが並び、その進化の歴史を象徴している。

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日産グロリアの歴代人気モデルに興味をお持ちですね。「栄光」の名を持つこの車は、1959年の誕生から2004年の終焉まで、日本の高級車市場において常に特別な存在感を放ち続けてきました。多くのファンを魅了し続けるその背景には、単なる移動手段を超えた、時代ごとの憧れや技術革新の物語が息づいています。

この記事では、グロリアの歴代モデル一覧を詳細に振り返りながら、その人気の秘密を深く掘り下げていきます。すべては、航空機技術をルーツに持つプリンス自動車が生み出した「プリンスグロリア」の誕生秘話から始まります。そして、今なお強烈な個性を放つグロリア3代目、通称「縦目」の魅力と、クラシックカーとなった現在の縦目グロリアの中古価格事情にも迫ります。

さらに、セドリックとの兄弟車関係が確立され大ヒット作となったグロリア4代目230の人気、長年のライバルであり続けたセドリックとグロリアの違いを徹底比較。時代を革新したグロリアY30のV6ターボの評価、そしてグロリアのスポーティイメージを決定づけたグロリアY31グランツーリスモの人気にも焦点を当てます。バブル期に生まれたグロリアY32の挑戦的なデザインの魅力、パワフルなグロリアY33の馬力とスペック、時代を彩った懐かしいグロリアの歴代CM、さらには現実的な視点でのグロリア中古車の選び方、歴代オーナー評価、そして多くのファンに惜しまれつつ迎えたグロリア生産終了の理由まで、グロリアに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。

  • プリンス時代から続くグロリアの栄光の歴史
  • 「縦目」や「グランツーリスモ」など人気モデルの特徴
  • セドリックとの具体的な違いと各モデルの個性
  • 歴代モデルの中古車選びのポイントと注意点

グロリア歴代人気の原点:プリンス時代

  • 秘話:プリンスグロリア誕生の背景
  • グロリア歴代モデル一覧で見る進化
  • 縦目グロリア3代目の魅力と中古価格
  • グロリア4代目230が誇る人気
  • セドリックとグロリアの違いを比較

秘話:プリンスグロリア誕生の背景

1959年、皇室への献上を祝う式典で、初代プリンスグロリア(BLSI型)が披露されている歴史的な瞬間。和装と洋装の人々が車を取り囲み、日本の宮殿を背景に、車の高貴な出自を強調する。

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日産グロリアの物語は、日産自動車に合併される前のプリンス自動車工業時代にまで遡ります。初代グロリア(BLSI型)が誕生したのは1959年(昭和34年)のこと。これは、当時の皇太子殿下(現・上皇陛下)のご成婚を祝して「栄光(Gloria)」と名付けられ、実際に献上もされたという非常に高貴な出自を持っています。

当時のプリンス自動車は、戦前の立川飛行機・中島飛行機といった航空機開発をルーツに持つ技術者集団でした。そのため、自動車製造においてもその技術力は群を抜いており、初代グロリアは、先に登場していたスカイライン(ALSI型)をベースとしながらも、内外装をより豪華に仕立てた上級モデルとして開発されました。

そして、グロリアの名を、そして「技術のプリンス」の名を決定的にしたのが、1962年(昭和37年)に登場した2代目(S40型)です。先進的なフラットデッキスタイルを採用したこのモデルに、翌1963年、「スーパー6」グレードが追加されます。ここに搭載されたのが、日本初の2.0Lクラス直列6気筒SOHCエンジン「G7型」でした。

6気筒ならではの圧倒的な静粛性と、SOHCによる滑らかな吹け上がりは市場に衝撃を与え、高級車としての地位を不動のものとします。このG7型エンジンこそが、後にスカイラインGT(S54型)に転用され、モータースポーツシーンで数々の伝説を作る礎となったのです。この事実は、日産ヘリテージコレクションの記録にも詳しく残されています。

豆知識:プリンスの理想主義と技術への矜持
プリンス自動車は技術的理想を追求するあまり、コスト度外視とも言える開発を行うことで知られていました。2代目S40型グロリアも、前述のG7型エンジンに加え、当時の国産車としては極めて珍しいド・ディオンアクスル(リアサスペンション)を採用するなど、非常に凝った機構を持っていました。これは優れた路面追従性を実現しましたが、同時に高い製造コストを要しました。その結果、車両価格も高騰。商業的にはライバルのトヨタ・クラウンに苦戦を強いられ、これが1966年(昭和41年)の日産との合併に至る一因ともなりました。グロリアの血統には、常にこのプリンスの「技術への矜持」が色濃く流れているのです。

グロリア歴代モデル一覧で見る進化

グロリアは、1959年の誕生から2004年の終焉まで、実に45年間、合計11世代にわたって日本の高級車市場を牽引してきました。その進化の系譜は、戦後復興から高度経済成長、バブル経済、そしてグローバル化へと至る、日本のモータリゼーションの歴史そのものと言えます。ここでは、その主要な歴代モデルを一覧でご紹介します。

世代 (型式) 販売期間 主な特徴・愛称・トピック
初代 (BLSI型) 1959-1962年 プリンス自動車製。皇太子殿下(当時)ご成婚記念車。スカイラインベース。
2代目 (S40型) 1962-1967年 フラットデッキスタイル。日本初の直6 SOHC「G7型」搭載 (スーパー6)。
3代目 (A30型) 1967-1971年 日産合併後初のモデル。通称「縦目(タテグロ)」。プリンス設計が色濃く残る。
4代目 (230型) 1971-1975年 セドリックと基本設計を共通化。通称「ニーサンマル」。コークボトルラインが特徴。
5代目 (330型) 1975-1979年 オイルショックの影響を受けるも、豪華さと安全性を追求。角目2灯デザインへ。
6代目 (430型) 1979-1983年 直線基調のクリーンなデザイン。日本初のターボエンジン(L20ET型)搭載
7代目 (Y30型) 1983-1987年 日本初のV6エンジン(VG型)搭載。ハイソカーブームの一翼を担う。
8代目 (Y31型) 1987-1991年 「グランツーリスモ」登場。個人向け4ドアハードトップ専用モデル化。
9代目 (Y32型) 1991-1995年 丸みを帯びたデザインへ一新。グランツーリスモは丸目4灯を採用。
10代目 (Y33型) 1995-1999年 新世代VQエンジン搭載。スポーティとラグジュアリーの両立。
11代目 (Y34型) 1999-2004年 最後のグロリア。先進のエクストロイドCVT搭載車も設定。

このように、グロリアは「日本初」の技術を数多く搭載し、時にはスポーティに、時にはラグジュアリーの頂点を目指し、その姿を変えながら日本の高級車像を定義し続けてきました。

縦目グロリア3代目の魅力と中古価格

日本の伝統的な街並みに溶け込むように停められた、濃紺の3代目縦目グロリア(A30型)。その独特のフロントデザインが夕日に照らされ、クラシックカーイベントの雰囲気を醸し出している。

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1966年の日産とプリンスの合併後、翌1967年(昭和42年)に登場した3代目(A30型)は、その独特なデザインから今なお多くのファンを持つカリスマ的モデルです。日産ブランドとして発売されましたが、開発自体はプリンス主導で行われたため、プリンス色の濃い最後のモデルとも言われます。

最大の特徴は、縦に配置された4灯式ヘッドライトと、それを強調するかのように中央が突き出たフロントグリルです。この威厳と個性を兼ね備えたデザインから、通称「タテグロ」と呼ばれ親しまれています。

プリンス時代から引き継いだG7型エンジン(直列6気筒)搭載車もラインナップされ、ボディラインは当時のアメリカ車(ポンティアックなど)を彷彿とさせる、伸びやかでダイナミックなもの。他の国産車とは一線を画すその存在感は、まさに「プリンスの遺作」と呼ぶにふさわしいものでした。

「タテグロ」の魅力は、何といってもその圧倒的な個性と風格です。現代の均整の取れたデザインとは対極にある、アクの強さと重厚感。このクラシカルな雰囲気こそが、旧車ファンやカスタムビルダーにとって垂涎の的となっているのです。

縦目グロリアの中古価格事情

製造から既に50年以上が経過しているため、縦目グロリアの中古車市場での流通量は非常に少なくなっています。状態の良い個体を見つけるのは、年々困難を極めています。

価格帯はまさに「時価」であり、コンディションによって数十万円から数百万円までと幅広いです。レストア(修復)が必要な「ベース車両」と呼ばれる状態のものでも100万円以上、内外装や機関が良好なコンディションの個体や、希少なグレード(スーパーデラックスやバン、ワゴン)になると、300万円〜500万円以上、場合によってはそれ以上のプライスが付くことも珍しくありません。

縦目グロリア中古車購入時の注意点
これは完全なクラシックカーです。購入には専門的な知識が不可欠であり、情熱と覚悟が求められます。

1. サビと腐食: 最大の敵です。特にフレーム、フロア、フェンダーアーチ、窓枠周辺のサビ・腐食の状態は徹底的に確認が必要です。
2. 機関の状態: エンジンや駆動系がオリジナルを保っているか、どのようなメンテナンスを受けてきたかを確認します。
3. 部品の入手可否: 内外装のメッキパーツやゴム類(ウェザーストリップ)などは非常に入手困難です。欠品がないかを厳しくチェックしてください。

購入後の維持費や修理費用も現代の車とは比較にならないほど高額になることを覚悟し、必ず信頼できる旧車専門店と二人三脚で進めることが賢明です。

グロリア4代目230が誇る人気

1970年代の自動車カタログ風の画像で、海岸線を走る白い4代目グロリア230型。ピラーレスハードトップの開放感が強調され、当時のスタイリッシュなデザインを伝える。

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1971年(昭和46年)に登場した4代目(230型)、通称「ニーサンマル」は、グロリアの歴史において大きな転換点となったモデルです。この代から、兄弟車であるセドリックと基本設計(プラットフォームや主要コンポーネント)を完全に共通化しました。これは、日産とプリンスの合併による開発リソースの合理化の結果でした。

230型の人気の理由は、そのスタイリングにあります。当時のアメリカ車のデザイントレンドであった、流麗な「コークボトルライン」(コカ・コーラの瓶のように中央がくびれ、前後フェンダーが張り出したスタイル)を大胆に採用。この抑揚あるデザインは、それまでの重厚な高級車像とは一線を画すものでした。

また、このモデルで初めて2ドアハードトップが設定され、よりパーソナルでスポーティなイメージを獲得しました。さらに決定打となったのが、1972年(昭和47年)に追加された日本初の「ピラーレス4ドアハードトップ」です。センターピラー(前席と後席の間の柱)がない圧倒的な開放感とスタイリッシュなフォルムは、当時の若者層を中心に爆発的な人気を博しました。

「ニーサンマル」大ヒットの背景
230型の大ヒットにより、セドリック/グロリア連合は、販売台数において長年の絶対王者であったトヨタ・クラウンを初めて上回るという歴史的快挙を成し遂げました。これは、セドリックとの共通化によるコストダウンと、時代が求めるパーソナルでスタイリッシュなデザインが見事に融合した結果でした。

セドリックとグロリアの違いを比較

「セドリックとグロリアは何が違うのか?」という疑問は、両車の歴史を通じて常につきまとうテーマです。前述の通り、4代目(230型)以降は基本設計を共通とする兄弟車(姉妹車)となりましたが、日産は両車に明確な個性を持たせるための差別化を図っていました。

主な差別化のポイント:デザインと販売チャネル
両車の最大の違いは、エクステリア(外装)のデザイン、特にフロントグリルテールランプの意匠に集約されていました。また、取り扱う販売ディーラー網も異なっていました。

時代によってその傾向は異なりますが、一般的には以下のようなイメージ戦略が取られていました。

  • セドリック (Cedric):
    オーナーカーとしての需要に加え、ハイヤーや公用車といったフォーマルな需要も強く意識していました。そのため、デザインは格調高く、伝統的で、落ち着いた雰囲気を採用する傾向がありました。
    (取り扱い:日産モーター店)
  • グロリア (Gloria):
    プリンス時代からのスポーティな血統と先進性を(特にY31型以降)強調。デザインは先進的で、よりパーソナル感が強く、スポーティな印象を与えるものを採用する傾向がありました。
    (取り扱い:日産プリンス店)

このキャラクター分けはモデルチェンジのたびに明確になっていきます。例えば、Y31型ではグロリアにのみスポーティグレード「グランツーリスモ」が設定され(後にセドリックにも追加)、Y32型ではグロリアのグランツーリスモが丸目4灯、セドリックのラグジュアリー系(ブロアム)が角目2灯を採用するなど、明確な個性が与えられていました。

プリンス店は、スカイラインなども扱うスポーティなイメージの店舗網であり、この販売チャネルの違いもグロリアのキャラクター形成に大きく影響を与えていたと言えます。

 

セドリックとグロリアの違いを徹底解説!【兄弟車の歴史】

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グロリア歴代人気を牽引したY型

  • グロリアY30 V6ターボの評価
  • グロリアY31グランツーリスモの人気
  • グロリアY32デザイン魅力とY33馬力スペック
  • グロリア歴代CMと生産終了の理由
  • グロリアオーナー評価とグロリア中古車選び方
  • 総括:グロリア歴代人気の軌跡

グロリアY30 V6ターボの評価

1983年(昭和58年)に登場した7代目(Y30型)は、日本の自動車史、いやエンジン史に名を刻む歴史的なエンジンを搭載したモデルです。それが、日本初の量産型V型6気筒エンジン「VG型」です。

それまでの国産高級車の主流であった直列6気筒エンジンは、滑らかさ(振動の少なさ)に優れる反面、エンジン自体が長くなるため、居住空間(特に足元)や衝突安全性の確保に不利でした。一方、V型6気筒エンジンは、全長をコンパクトに設計できるため、室内の居住空間を拡大できるほか、衝突時のクラッシャブルゾーンの確保にも大きく寄与しました。Y30型は、この新開発VGエンジンを搭載することで、よりモダンで快適、かつ安全な高級車へと一気に進化したのです。

中でも当時の市場から高い評価を得たのが、トップグレードに搭載されたV6 3.0Lターボエンジン「VG30ET」です。大排気量V6ならではの滑らかなフィーリングと、ターボによる強力な加速性能(当時の国産車トップクラスのネット195馬力 ※後期型)を両立させたこのエンジンは、まさに時代の「パワーウォーズ」を象徴する存在でした。直線基調のシャープなスタイリングと、「クリスタルカット」と呼ばれた豪華な内装と相まって、Y30型は「ハイソカーブーム」の一翼を担う大人気モデルとなったのです。

Y30ワゴンのロングライフ
Y30型は、セダンやハードトップがY31型に移行した後も、ワゴンとバン(商用車)が1999年(平成11年)まで、実に16年間も継続生産されたことでも知られています。そのレトロな外観(特に木目調パネルをあしらった「ウッディワゴン」)は、現代でもカスタムベースとして根強い人気を誇っています。

グロリアY31グランツーリスモの人気

夕焼けの山道を駆け抜ける黒い日産グロリアY31グランツーリスモ。低い車高と精悍なフロントグリルが、スポーティな高級感を際立たせている。

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日本がバブル景気へと突き進む1987年(昭和62年)に登場した8代目(Y31型)は、グロリアのスポーティイメージを決定づけた、歴史的なモデルです。この代から、セダン(営業車・公用車向け)と4ドアハードトップ(個人オーナー向け)が、異なるボディと明確なコンセプトで開発されるようになりました。

Y31型ハードトップの最大のトピックは、新グレード「グランツーリスモ (Gran Turismo)」の衝撃的な登場です。それまでの日本の高級車=「フカフカの足回り」「豪華絢爛な内装」という常識を覆し、あえて引き締められた欧州車のような足回りと、専用のエアロパーツ、精悍なブラックアウトされたフロントグリル、バケットタイプのシートを採用しました。

エンジンは、新開発のVG20DET(2.0L V6 DOHCターボ)などが搭載され、その明確な「走り」を重視したキャラクターは、従来の高級車ユーザーとは異なる、走りを求める若い世代の心を見事に掴みました。このY31型グロリアは、高級車市場に「スポーティラグジュアリー」という新しい価値観を提示したのです。

当時、姉妹車として3ナンバー専用ボディで登場した「シーマ(FPY31型)」が、その圧倒的なパワーと存在感で爆発的なヒットを記録し、「シーマ現象」という社会現象を巻き起こしました。しかし、Y31型グロリアは、シーマとは異なる5ナンバーサイズ(一部3ナンバー)のパーソナルなスポーティセダンとして、確固たる地位を築きました。この「グランツーリスモ」の人気は絶大で、中古車市場でも「Y31指名買い」のファンが後を絶ちません。

グロリアY32デザイン魅力とY33馬力スペック

左右分割された画像で、左側には都市の雨の夜に佇む緑色のY32型グロリアグランツーリスモ、右側にはサーキットでタイヤスモークを上げて加速するY33型グロリアグランツーリスモが描かれている。Y33型には「270 PS VQ30DET」のエンジン情報が表示され、それぞれのモデルの個性を対比させている。

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Y31型「グランツーリスモ」の成功を受け、グロリアはスポーティラグジュアリー路線をさらに進化させていきます。

Y32型 (1991-1995年) のデザイン魅力

バブル景気の頂点、1991年(平成3年)に登場した9代目(Y32型)は、デザイン面で大きな変革を遂げました。Y31型の直線基調から一転し、丸みを帯びた流麗でワイドな3ナンバー専用ボディを採用。このモデルのハイライトであり、今なお語り草となっているのが、グランツーリスモ系に採用された「丸目4灯ヘッドライト」です。

当時の高級車としては異例とも言えるこの大胆なデザインは、賛否両論を巻き起こしました。しかし、兄弟車セドリックのラグジュアリー系(ブロアム)が伝統的な角目2灯を採用したことと明確な対比となり、グロリアの「スポーティでパーソナル」「挑戦的」という個性を市場に強く印象付けました。Y32型は、そのエレガントかつ挑発的なデザインで、Y31型とはまた異なる熱狂的なファン層を獲得しました。

Y33型 (1995-1999年) の馬力とスペック

1995年(平成7年)に登場した10代目(Y33型)は、デザインこそY32型の正常進化型(キープコンセプト)でしたが、その中身は劇的な進化を遂げていました。最大の功績は、長年熟成されてきたVG型エンジンに代わり、新世代のV6エンジン「VQ型」を全面的に搭載したことです。

軽量なアルミブロックを採用し、高効率かつ高回転までスムーズに回るVQエンジンは、その卓越したパフォーマンスと静粛性で世界的に高い評価を受け、米国の「ウォーズ・オートワールド10ベストエンジン」を初受賞(その後14年連続受賞)するという快挙を成し遂げました。特に注目されたのは、ターボモデルのスペックです。

エンジン型式 種類 排気量 最高出力 最大トルク
VQ30DET V型6気筒 DOHC ターボ 2,987cc 270 PS / 6,000rpm 37.5 kgf・m / 3,600rpm
VQ30DE V型6気筒 DOHC NA 2,987cc 220 PS / 6,400rpm 28.5 kgf・m / 4,400rpm

(※数値はY33型 後期型グランツーリスモ アルティマのもの)

Y33型は、VQ30DETエンジンによって当時の自主規制値いっぱいであった270馬力を達成。余裕のあるボディと、世界が認めた強力かつ洗練されたエンジンを組み合わせ、高級セダンでありながらスポーツカーに匹敵する、まさに「羊の皮を被った狼」とも言える動力性能を実現しました。

グロリア歴代CMと生産終了の理由

グロリア歴代CM

グロリアの歴代CMは、その時代の空気感や車のキャラクターを色濃く反映したものが多く、印象的な作品が多数あります。特にY31型以降は、そのスポーティで知的なイメージを前面に押し出したCMが展開されました。

例えば、Y31型では「日本の高級車は、変わらなければならない。」という、従来の価値観への挑戦とも取れる挑発的なキャッチコピーが使われました。Y32型やY33型では、俳優の黒木瞳さんが長きにわたり起用され、「大人のためのスポーティセダン」という、知的で洗練された唯一無二のイメージを確立しました。これらのCM戦略は、グロリアのブランドイメージ構築に大きく貢献しました。

グロリア生産終了の理由

2004年(平成16年)10月、11代目(Y34型)をもって、グロリアはその45年間にわたる輝かしい歴史に幕を下ろしました。生産終了の最大の理由は、時代の変化(市場ニーズの変化)と日産の経営戦略です。

1990年代後半から、国内の自動車市場ではミニバンやSUVが台頭し、伝統的なセダン市場は縮小傾向にありました。また、1999年にルノーとのアライアンスを締結した日産は、経営再建計画「日産リバイバルプラン」のもとで、車種ラインナップの大胆な整理・統合を進めていました。

その結果、長年にわたり兄弟車として併売されてきたセドリックとグロリアの歴史的役割を終え、両車を統合した後継車種として、新世代のFR高級セダン「フーガ(FUGA)」を開発するという戦略的決断が下されました。(出典:日産自動車 2004年10月14日プレスリリース「新型高級スポーツセダン「フーガ」を発売」

「栄光」から「風雅」へ
グロリア(Gloria:栄光)とセドリック(Cedric:人名)の名は消え、新時代の高級セダン「フーガ(Fuga:風雅・奔放)」へとバトンが渡されました。これは、日本の高級車史における、一つの時代の終わりを象徴する出来事でした。

グロリアオーナー評価とグロリア中古車選び方

グロリア オーナー評価

歴代グロリアのオーナー評価を見ると、年式やモデルを問わず、多くのオーナーが強い愛着を持っていることがわかります。共通して挙げられるポジティブな評価は以下の通りです。

  • デザインの秀逸さ: 「タテグロの威厳」「Y31ハードトップの低いフォルム」「Y32グランツーリスモの丸目4灯」など、特定のモデルのデザインに惚れ込んで購入し、所有し続けているという声が圧倒的に多いです。
  • 余裕のある動力性能: 特にY30以降のターボモデル(VGターボ、VQターボ)の、アクセルを踏み込んだ際の力強い加速感と高速巡航の快適性は、現代の車と比較しても遜色ないと高く評価されています。
  • 高級車ならではの居住性: ゆったりとした室内空間や、豪華な内装(特にブロアム系)、そして長距離運転でも疲れにくいシートなども、満足度が高いポイントとして挙げられます。

一方で、ネガティブな評価としては、年式が古いモデル(特にY31以前)については、現代の基準では厳しい燃費性能や、経年劣化による各種部品(ゴム類、電装系)の故障を懸念する声も見られます。これらは旧車を維持する上での「味」として楽しむ、ある種の覚悟も必要です。

グロリア 中古車 選び方

グロリアの中古車を選ぶ際は、どの年代のモデルを狙うかによって、チェックすべきポイントや注意点が大きく異なります。どのモデルにも共通する大前提は、整備記録簿がしっかり残っており、どのようなメンテナンスを受けてきたかが明確な個体を選ぶことです。

中古車選びの世代別チェックポイント
グロリアの中古車は、大きく3つの世代に分けて考えることができます。

1. クラシック系(初代 〜 4代目230型など)

もはや「文化財」とも言える領域です。最大の敵はサビと腐食です。ボディパネルはもちろん、フロア、フレーム(車台)の状態をリフトアップして徹底的にチェックしてください。エンジンは比較的頑丈なものが多いですが、ゴム類やメッキパーツなどの部品の入手は絶望的に困難なため、欠品の有無が価格を大きく左右します。修理前提、レストアベースとして考える必要があります。

2. ネオクラシック系(5代目330型 〜 8代目Y31型)

Y30型やY31型も、立派な「旧車」の域に入っています。サビに加え、電装系(パワーウィンドウ、エアコン、デジタルメーターなど)の不具合が頻発しやすい時期です。特にY31のVGエンジンは、ディストリビューターの故障が持病として知られています。ターボ車は、オイル管理が悪かった個体も多いため、エンジンノイズや白煙の有無を厳しくチェックしてください。

3. モダン系(9代目Y32型 〜 11代目Y34型)

比較的年式は新しいですが、それでも最終型(Y34型)ですら生産終了から20年以上が経過しています。Y33型のVQエンジン(特にターボ)は、過走行によるオイル管理状態が重要です。また、Y34型に搭載された先進の「エクストロイドCVT」は、非常に特殊な機構であるため、万が一故障した際の修理費が極めて高額になる可能性があり、CVTフルードの交換履歴などを必ず確認してください。

中古車選びの最大の注意点:「修理地獄」の回避
どのモデルも、すでに「古い車」です。インターネットオークションや格安中古車店で「価格の安さ」だけで飛びつくと、購入後の修理費用が車両本体価格をあっという間に上回る「修理地獄」に陥る危険性が非常に高いです。

必ず、その時代のグロリア(あるいは日産FRセダン)の整備・修理実績が豊富な専門店で相談し、車両の状態と今後のメンテナンスプランについて十分な説明を受けた上で、納得して購入することが最も重要です。

総括:グロリア歴代人気の軌跡

アスファルトの路面に年代が記されたラインに沿って、初代から最終モデルまでの歴代グロリアが曲線状に整然と並べられている様子を上空から捉えた画像。数人の日本人が車列を眺め、その歴史の軌跡をたどっている。

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日産グロリアは、その45年の歴史において、単なる高級車ではなく、時代の最先端技術とデザインをまとい、オーナーのステータスと夢を乗せて走り続けてきました。グロリアの歴代モデルが持つ人気の軌跡を、最後に記事の要点としてまとめます。

  • グロリアは「栄光」の名で1959年にプリンス自動車から誕生した
  • 初代は皇太子殿下(当時)のご成婚を記念した献上車であった
  • 2代目S40型は日本初の直6 SOHC「G7型」を搭載した技術の結晶だった
  • 3代目A30型は日産合併後のモデルで「縦目(タテグロ)」の愛称で親しまれる
  • 縦目グロリアの中古価格は希少性から高騰しており状態の見極めが重要である
  • 4代目230型はセドリックと設計共通化されピラーレス4ドアHTが人気を博した
  • セドリックとグロリアの違いは主にグリルやテールランプのデザインにある
  • セドリックはフォーマル、グロリアはスポーティな味付けが基本だった
  • 7代目Y30型は日本初のV6エンジン「VG型」とV6ターボを搭載した
  • 8代目Y31型は「グランツーリスモ」の登場でスポーティ路線を確立した
  • Y31グランツーリスモの人気は今なお根強く中古車市場でも高い需要がある
  • 9代目Y32型は丸みを帯びたデザインと丸目4灯ヘッドライトが特徴だった
  • 10代目Y33型は世界的に評価された新世代VQエンジンを搭載しターボ車は270馬力を達成した
  • 歴代CMには黒木瞳さんなどが起用され洗練されたイメージを構築した
  • 生産終了の理由はセダン市場の縮小と後継車種「フーガ」への統合だった
  • オーナー評価は各世代のデザインと余裕のある動力性能で高い満足度を得ている
  • グロリア中古車選びは年式に応じた弱点(サビ、電装系、CVTなど)の把握と専門店選びが不可欠である
  • この記事を書いた人

旧車ブロガーD

はじめまして! 80~90年代の名車たちへの「憧れ」と、愛車のメンテナンスで得た「機械への敬意」を胸に、誠実な情報をお届けします。

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