フォード・マスタング 5代目は、初代を彷彿とさせるクラシカルなデザインと現代的な走行性能を両立させた、今なお高い人気を誇るモデルです。しかし、いざ購入を検討するとなると、「マスタング 5代目とは具体的にどんな車なのか」「前期と後期の違いは何か」といった基本的な情報から、V6とGTの違いや詳細なエンジン スペック、日本の道路事情におけるサイズ感まで、気になる点は多いでしょう。さらに、4代目や6代目との比較、アメ車ならではの魅力や豊富なカスタム事例に心惹かれる一方で、「マスタング 5代目はダサい」という意見や、実際の燃費、維持費や税金といった現実的なコスト、そして故障のリスクに関する不安も無視できません。この記事では、中古相場を踏まえつつ、後悔しないためのマスタング 5代目の選び方の注意点を網羅的に、そして深く掘り下げて解説し、あなたの疑問を完全に解消します。
- 5代目マスタングの前期・後期の違いやグレードごとの特徴
- 購入前に知っておくべきメリット、デメリット、注意点
- 燃費や税金など具体的な年間維持費のシミュレーション
- 中古車選びで失敗しないためのチェックポイント
5代目マスタングの概要と魅力の徹底解説
- マスタング 5代目とはどんなモデルか
- マスタング 5代目 前期 後期 違いを比較
- V6とGTの違いとエンジン スペック
- サイズ感とマスタング 4代目 6代目 比較
- マスタング 5代目 魅力とカスタム事例
マスタング 5代目とはどんなモデルか
フォード・マスタング 5代目は、2005年から2014年モデルとして、10年間にわたり生産されたアメリカを象徴するスポーツカーです。フォード社内の開発コード「S197」の名で広く知られています。この世代の成功を理解する上で最も重要なキーワードが、当時フォードのデザイン担当上級副社長であったJ Mays氏が提唱した「レトロフューチャリズム」です。これは単なる過去の模倣ではなく、ブランドが持つ歴史的資産の中から象徴的なデザイン要素を抽出し、現代の技術や安全基準に合わせて再構築することで、未来的かつ懐かしいという二律背反の魅力を両立させるデザインアプローチでした。
具体的には、1967-68年モデルの黄金期からインスピレーションを得ており、長く力強いボンネットと短いリアデッキが織りなす「ロングノーズ・ショートデッキ」のプロポーション、サイドパネルの「Cスクープ」と呼ばれる窪み、そして誰もがマスタングと認識できる象徴的な3連テールランプなどが巧みに取り入れられています。この戦略は見事に市場の心を捉え、発売初年度の2005年には全米で16万台以上を売り上げる大ヒットを記録しました。
専用設計の「D2Cプラットフォーム」とその背景
5代目マスタングは、その長い歴史の中で初めて、他の車種と共有しないマスタング専用のプラットフォーム「D2Cプラットフォーム」が与えられた画期的な世代です。開発当初、フォードは上級FR車に使われていた高コストな「DEW98プラットフォーム」の採用も検討しましたが、マスタングの魅力である「手の届く価格」を維持するため、これを断念。結果として、フロントサスペンションの基本構造を参考にしつつ、マスタングの特性に合わせて再設計されたD2Cプラットフォームが生まれました。これにより、旧世代と比較してねじり剛性は30%以上向上し、走行性能と乗り心地が飛躍的に進化したのです。
このレトロデザインの商業的成功は、フォード一社の成功に留まりませんでした。当時市場から姿を消していたライバル、GMのシボレー・カマロとクライスラーのダッジ・チャレンジャーの復活を直接的に促すこととなり、「第二次ポニーカー戦争」とも呼ばれる新たな競争時代を切り開く、歴史的な起爆剤となったのです。
マスタング 5代目 前期 後期 違いを比較
10年という長い生産期間を持つ5代目マスタングは、2010年モデルを境に「前期型(2005-2009)」と「後期型(2010-2014)」に大きく分けられます。単なるフェイスリフトに留まらず、特に2011年モデル以降は心臓部であるパワートレインが完全に刷新されており、中古車を選ぶ上では「2つの異なる世代」として認識することが極めて重要です。ここでは、その違いを詳細に比較検討します。
項目 | 前期型 (2005-2009) | 後期型 (2010-2014) |
---|---|---|
エクステリアデザイン | 初代を強く意識した、直線的でノスタルジックなデザイン。大きな長方形のフロントグリルが力強さを象徴。 | ルーフを除くほぼ全ての外板が新設計。より筋肉質で前傾姿勢のシャープなデザインに刷新。グリルは小型化され、ヘッドライトもスリムな形状に。 |
インテリアの質感 | コストを意識したプラスチック素材が多く、やや質実剛健な印象。オプションで125色から選べる「MyColor」メーターは画期的だった。 | ダッシュボードに一体成型のソフトタッチ素材や本物のアルミパネルを多用し、質感が劇的に向上。プレミアムカーに相応しい上質な空間を獲得。 |
パワートレイン | V6は4.0L SOHC (210hp)、GT(V8)は4.6L SOHC 3バルブ (300hp)。信頼性は高いが、設計はやや古典的。 | 【革命的変化】2011年以降、V6は3.7L DOHC (305hp)、GT(V8)は5.0L DOHC (412hp~)へ一新。出力、燃費、洗練性の全てが飛躍的に向上。 |
テールランプ | シンプルな点灯式のLED。 | 1960年代を彷彿とさせるシーケンシャル(流れるウインカー)点灯式のLEDテールランプが復活し、大きな話題を呼んだ。 |
装備 | 基本的な装備が中心。ナビはDVDベース。 | Microsoftと共同開発したインフォテインメントシステム「Ford SYNC」を導入。メーター内に液晶ディスプレイも追加(2013年〜)。 |
2013-2014年モデルの最終変更
後期型の中でも、2013-2014年モデルは最後のマイナーチェンジが施されています。フロントグリルやバンパーのデザインがよりアグレッシブなものに変更され、エンジンフードには排熱用のエアアウトレットが追加されました。また、テールランプもブラックアウトされた新デザインになるなど、最終モデルにふさわしい精悍な外観となっています。
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特に重要なのが2011年モデル以降のエンジン刷新です。見た目は2010年モデルから後期型ですが、走りの性能を最優先するなら、心臓部が別物になった2011年以降のモデルを強く推奨します。2010年モデルは「新しい内外装に、改良された旧エンジン」を積んだ1年だけの過渡期モデルという、ユニークな存在です。中古車市場でも、この年式を境に価格が大きく変わる傾向があります。
V6とGTの違いとエンジン スペック
5代目マスタングを選ぶ上で最も大きな、そして最も楽しい選択肢が、ベーシックなV6モデルと、ハイパフォーマンスなV8エンジンを搭載した「GT」モデルのどちらを選ぶかという点です。両者には明確なキャラクターの違いがあり、特に後期型ではその差がより個性的になっています。
モデル | エンジン名 | 排気量 | 最高出力 | 最大トルク | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
前期型 (2005-2009) | |||||
V6 | Cologne SOHC V6 | 4.0L | 210 hp | 325 Nm | 必要十分なパワーを持つエントリーモデル。 |
GT (V8) | Modular SOHC 3V V8 | 4.6L | 300 hp | 434 Nm | 伝統的なV8サウンドとトルクフルな加速が魅力。 |
後期型 (2011-2014) | |||||
V6 | Cyclone DOHC V6 | 3.7L | 305 hp | 380 Nm | 前期GTを凌駕する性能。軽快でバランスが良い。 |
GT (V8) | Coyote DOHC V8 | 5.0L | 412-420 hp | 529 Nm | 傑作と名高い高回転型エンジン。圧倒的なパフォーマンス。 |
V6か、GTか?ライフスタイルで選ぶ最適な一台
どちらのモデルを選ぶべきか、一概に優劣はつけられません。あなたのカーライフや何を重視するかによって最適な選択は異なります。
- 2011年以降のV6モデルがおすすめな人:
「軽快なハンドリングを楽しみたい」「日常の足としても使いたい」「維持費を少しでも抑えたい」という方には、V6モデルが最適です。フロントがV8モデルより軽量なため、コーナリングがより軽快に感じられます。305馬力という出力は、日本の道路では十二分な性能です。 - GTモデル (年式問わず)がおすすめな人:
「これぞアメ車、という体験がしたい」「腹の底から響くV8サウンドに憧れる」「信号が変わった瞬間に湧き上がるトルク感に酔いしれたい」という方には、GTモデル以外に選択肢はありません。マスタングの真骨頂であり、所有する満足感を最大限に満たしてくれるでしょう。
サイズ感とマスタング 4代目 6代目 比較
マスタング 5代目のボディサイズは、全長約4,780mm × 全幅約1,880mm × 全高約1,410mmです。この数字は、日本の道路環境でどう影響するのでしょうか。例えば、現行型のトヨタ・クラウン(クロスオーバー)の全幅が1,840mm、人気のアルファードが1,850mmですから、それらよりわずかに広いことになります。このため、都心部の狭い路地や、昔ながらの機械式駐車場では注意が必要な場面があることは事実です。
しかし、一般的な国道や幹線道路、そしてほとんどのコインパーキングでは問題なく取り回せるサイズ感です。視界は、太いCピラー(後席横の柱)のため斜め後方がやや見えにくいですが、慣れでカバーできる範囲でしょう。購入を検討する際は、ご自身の駐車環境をメジャーで実測しておくことを強くお勧めします。
世代 | 全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
4代目 (SN95) | 約4,650mm | 約1,860mm | 約1,350mm | 2,570mm | 5代目より一回りコンパクト。90年代らしい丸みを帯びたデザイン。 |
5代目 (S197) | 約4,780mm | 約1,880mm | 約1,410mm | 2,720mm | ホイールベースを大幅に延長し、サイズアップ。存在感が増した。 |
6代目 (S550) | 約4,790mm | 約1,920mm | 約1,380mm | 2,720mm | さらにワイド&ロー化。より現代的でグローバルなデザインに。 |
このように比較すると、5代目は4代目から大幅にサイズアップし、堂々としたプロポーションを手に入れたことが分かります。このアメリカ車らしい伸びやかなサイズ感が、他に代えがたいスタイリングの魅力に直結しているのです。
マスタング 5代目 魅力とカスタム事例
5代目マスタングの最大の魅力は、やはりその時代を超越し、多くの人々の心を捉える秀逸なスタイリングにあるでしょう。初代への深いリスペクトに満ちたデザインは、ただ古いだけでなく、力強さとモダンさを兼ね備えており、所有する喜びを日々感じさせてくれます。特に、後期型GTが奏でる5.0L Coyote V8エンジンのサウンドは、多くの自動車愛好家を虜にする官能的なもので、これこそがマスタングを選ぶ理由だと断言するオーナーも少なくありません。
また、「手の届く価格で本物のハイパフォーマンスを楽しめる」という卓越したコストパフォーマンスも見逃せない魅力です。中古車市場では、年式やグレードによっては非常に魅力的な価格で流通しており、同程度の性能を持つ他のスポーツカーと比較しても、圧倒的にお買い得なケースが多々あります。「初めてのアメ車」として、これほど最適な一台はないと言えるでしょう。
豊富なカスタムパーツで「自分だけの一台」を創り上げる喜び
マスタングは世界中で愛されている車種のため、純正・社外を問わずアフターパーツが非常に豊富に存在します。これにより、オーナーの個性や好みを反映させた、まさに「自分だけ」のマスタングを作り上げる楽しみが無限に広がっています。
- ホイール&タイヤ:最も手軽で効果的なカスタム。クラシカルな5本スポークから現代的なメッシュデザインまで、選択肢は無限です。インチアップとワイド化で、見た目の迫力は劇的に向上します。
- エキゾーストシステム:V8サウンドをさらに際立たせるための定番カスタム。Borla、MagnaFlow、Corsaといった有名ブランドから、それぞれ特徴的な音質のマフラーが販売されており、YouTubeなどで音を比較しながら選ぶのも楽しみの一つです。
- サスペンション:ローダウンサスや車高調を組むことで、より低く構えたアグレッシブなスタイリングを実現します。走行性能も向上し、よりダイレクトなハンドリングを味わえます。
- エアロパーツ:RoushやSaleenといったチューナーブランドのフロントスポイラーやリアウィング、サイドスカートを装着することで、ノーマルとは一線を画すレーシーな雰囲気を演出できます。
- インテリア:シフトノブの交換や、シートの張り替え、オーディオのアップグレードなど、内装に手を入れることで、より愛着の湧く空間を作り上げることが可能です。
これらのパーツを組み合わせることで、あなただけの理想のマスタングを追求する、終わらない楽しみが待っています。
マスタング 5代目の中古購入完全ガイド
- マスタング 5代目がダサいと言われる理由
- マスタング 5代目 燃費・維持費・税金
- マスタング 5代目で報告されている故障
- 中古相場とマスタング 5代目 選び方 注意点
- まとめ:アメ車入門にマスタング 5代目は最適
マスタング 5代目がダサいと言われる理由
多くのファンを熱狂させるデザインを持つ一方で、インターネット上などで「マスタング 5代目はダサい」という否定的な意見を目にすることがあります。なぜこのような声が聞かれるのでしょうか。その背景には、いくつかの複合的な理由が考えられます。
第一に、前期型V6モデルの標準仕様の印象が挙げられます。このモデルは、GTに比べてタイヤやホイールが小さく(16インチが標準)、車高も高めに設定されているため、デザイン本来の力強さがスポイルされ、やや腰高で迫力に欠ける印象を与えてしまうことがありました。ただ、これはあくまでノーマル状態の話であり、ホイール交換やローダウンといった基本的なカスタムで劇的に改善できる部分です。
第二に、「レトロ」なデザインそのものが、一部の人には「古臭い」「角ばっている」と映ってしまう可能性です。特に、6代目以降のよりモダンで流麗なグローバルデザインに慣れた目から見ると、5代目の直線的で無骨なデザインが時代遅れに感じられるという意見もあります。しかし、これは完全にデザインの好みの問題であり、むしろこのレトロ感とマッスルカーらしい力強さこそが5代目の最大の魅力であると評価する声が大多数を占めます。
技術的側面からの批判:リジッドアクスルサスペンション
デザイン以外で批判される点として、リアサスペンションに「リジッドアクスル(固定車軸)」という古典的な形式を採用したことが挙げられます。これは、左右の車輪が一本の車軸で繋がっている構造で、コーナリング中に路面が荒れていると、車体が跳ねるような挙動(アクスルホップ)を示すことがあります。同時代のライバル(カマロ、チャレンジャー)がより近代的な独立懸架式(IRS)を採用していたため、「技術的に古い」と指摘されることがありました。しかし、フォードのエンジニアはこの形式を巧みにチューニングしており、滑らかな路面では独立懸架に匹敵する性能を発揮します。また、構造がシンプルで頑丈なため、ドラッグレースでの発進性能に優れ、改造しやすいというマッスルカーならではのメリットもありました。
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結局のところ、これらの「ダサい」と言われる理由は、多くが表面的な印象や個人の価値観に基づくものです。車の歴史的背景や技術的な意図を理解すれば、5代目が決してダサい車ではなく、むしろ明確な哲学と魅力を持った、時代を代表する一台であることが分かるはずです。流行に流されない普遍的なカッコよさ、それこそが5代目の本質です。
マスタング 5代目 燃費・維持費・税金
アメ車、特に大排気量のマッスルカーの購入を検討する際に、避けては通れないのが燃費や税金といった現実的な維持費です。ここでは、具体的な数字を基に、年間のランニングコストを詳細にシミュレーションします。
燃費性能の実態
カタログスペックだけでは見えない実際の燃費は、オーナーにとって最も気になる情報の一つです。エンジンや年式、そして当然ながら運転スタイルによって大きく異なりますが、多くのオーナーからの報告を基にした一般的な目安は以下の通りです。
- V6モデル (3.7L DOHC):ストップ&ゴーの多い市街地で約7~8km/L、一定速度で巡航できる高速道路では約11~13km/L。現代のエンジンだけあって、300馬力超のパワーを考えれば健闘しています。
- GTモデル (5.0L DOHC):市街地では約5~6km/L、高速道路では約9~10km/L。アクセルを深く踏み込めば当然悪化しますが、V8の魅力を考えれば納得すべき数値でしょう。
前期型のエンジンはこれより1-2km/L程度悪化する傾向にあります。いずれにせよ、国産エコカーなどと比較すると燃料費がかさむことは、購入前にしっかりと認識しておく必要があります。
年間の維持費シミュレーション(GTモデルの場合)
ここでは、最も人気の高い後期型GTモデル(5.0L)を所有した場合の年間の主な維持費を、2025年現在の税制を基に試算してみます。
項目 | 費用(目安) | 備考 |
---|---|---|
自動車税(種別割) | 87,000円 | 総排気量4.5L超~6.0L以下。2019年10月1日以降に初回新規登録された場合は87,000円。それ以前は88,000円。(出典:総務省「2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります」) |
自動車重量税 | 16,400円/年 | 車両重量1.5t超~2.0t以下、エコカー減税対象外で登録から13年未満の場合。車検時に2年分(32,800円)を一括で支払います。 |
自賠責保険料 | 約10,005円/年 | 24ヶ月契約(20,010円)の場合の1年あたり換算額。 |
任意保険料 | 約80,000円~150,000円 | 年齢、等級、免許の色、車両保険の有無で大きく変動。スポーツカーのため料率は高めです。 |
ガソリン代 | 約204,000円 | 年間走行距離8,000km、実燃費6km/L、レギュラーガソリン価格170円/Lで計算。 |
メンテナンス費用 | 約30,000円~50,000円 | エンジンオイル交換(年2回)、タイヤやブレーキパッドなどの消耗品費用。 |
年間合計(目安) | 約427,405円~ | この他に、駐車場代や2年に一度の車検費用(法定費用以外)が別途必要になります。 |
結論として、5代目マスタングGTを所有するには、税金や燃料費を中心に年間で43万円~50万円程度の維持費を想定しておくのが現実的です。もちろん、これはあくまで一つのモデルケースであり、走行距離やメンテナンス状況、保険の等級によって大きく変動します。
マスタング 5代目で報告されている故障
5代目マスタングは、基本的な設計が堅牢で、同世代のアメ車の中では比較的信頼性の高いモデルと評価されています。しかし、生産から10年以上が経過した中古車である以上、経年劣化やモデル特有のウィークポイントが存在するのも事実です。購入後に思わぬ出費で後悔しないためにも、これらの「定番の故障事例」を事前に正確に把握しておくことが極めて重要です。
【最重要チェック項目】アルミ製フードの塗装浮きと腐食
5代目マスタングで最も有名かつ発生率の高いトラブルが、アルミ製ボンネットの先端や縁に発生する塗装の浮き(気泡)、そしてその下で進行する白い粉状の腐食です。これは、素材であるアルミニウムの特性と、ボンネットの縁を折り返して接着する製造工程の構造に起因するもので、多くの個体で程度の差こそあれ発生する可能性があります。購入前には必ずボンネットの先端部分と、裏側の縁を念入りに指でなぞるようにチェックしてください。一度発生すると再発しやすく、根本的な修理には板金塗装が必要となり高額な費用がかかる場合があります。
その他の注意すべきウィークポイント
- 前期V6 (4.0L) のタイミングチェーン周辺:エンジン内部にあるタイミングチェーンを適切な張力に保つためのテンショナーやガイドという部品が、経年劣化で摩耗することがあります。これが進行すると、エンジン始動時やアイドリング時に「カラカラ」「ガラガラ」といった異音が発生します。放置すると重大なエンジントラブルに繋がるため、異音がする個体は避けるか、修理を前提に検討する必要があります。
- 後期MT (MT82) のシフトフィールと異音:後期型に搭載されているGetrag社製の6速マニュアルトランスミッションは、一部の個体で、特にエンジンやミッションが冷えている時に1速から2速へシフトが入りにくい、あるいは特定のギアで「ゴリッ」という感触や異音が発生するという報告があります。試乗時には、ゆっくりと、そして時には素早くシフト操作を行い、全てのギアでスムーズに変速できるかを入念に確認することが重要です。
- 室内への雨漏り:これは特にコンバーチブルモデルで注意が必要ですが、クーペでも発生する可能性があります。原因の多くは、ルーフやドア、窓周りのウェザーストリップ(ゴム製のシール)の経年劣化によるものです。フロアカーペットが湿っていないか、カビ臭い匂いがしないか、トランクのスペアタイヤハウスに水が溜まった形跡がないかなどを確認しましょう。また、助手席足元への水漏れは、ワイパー下のカウルトップに溜まった枯葉などが原因でドレンが詰まり、エアコンのダクトから逆流する定番トラブルの一つです。
これらの問題は全ての車両で必ず発生するわけではありませんが、中古車選びにおけるリスクを減らすための重要なチェックポイントとして、ぜひ覚えておいてください。
中古相場とマスタング 5代目 選び方 注意点
5代目マスタングの中古車相場は、生産終了から年月が経過した現在、非常にこなれてきており、まさに「買い時」と言える状況です。しかし、その価格は年式、グレード、走行距離、そして何より車両のコンディションによって大きく変動します。カーセンサーnetなどの大手中古車情報サイトで2025年現在の一般的な相場観を調べると、おおよそ以下のようになっています。
- 前期型 (2005-2009):V6モデルであれば走行距離や状態によっては100万円台前半から見つけることができ、最も手軽にマスタングオーナーになれる選択肢です。人気のGTモデルでも150万円~250万円程度が中心価格帯となり、非常にコストパフォーマンスが高いと言えます。
- 後期型 (2010-2014):エンジンの性能が飛躍的に向上した2011年以降のモデルは市場での人気が非常に高く、価格も安定しています。V6モデルで200万円前後から、そして本命のGTモデルでは250万円~400万円以上が相場の中心となり、低走行で状態の良い最終モデルなどはさらに高値で取引されています。
後悔しないための中古車選び・5つの鉄則
魅力的な価格の個体を見つけても、すぐに飛びついてはいけません。以下の5つの鉄則を基に総合的に判断することが、長く付き合える良いパートナーと巡り合うための鍵となります。
- 年式とエンジンの選択を明確にする:前述の通り、走行性能と内外装の質感を重視するなら、予算が許す限り2011年モデル以降の後期型を狙うのが最も満足度の高い選択です。逆に、絶対的な速さよりもスタイリングと雰囲気を手頃な価格で楽しみたいのであれば、前期型も十分に魅力的な選択肢となります。
- 修復歴の有無を必ず確認する:車の骨格(フレーム)部分を修復した「修復歴車」は、たとえ綺麗に直っていても、走行安定性やボディの剛性に問題を抱えている可能性があります。相場より極端に安い個体は特に注意し、修復歴の有無とその内容を販売店に必ず確認しましょう。
- 定番の故障箇所を自分の目でチェックする:この記事で挙げた「ボンネットの腐食」「エンジンからの異音」「トランスミッションの動作」「雨漏りの痕跡」などを、自分の目で見て、耳で聞いて、手で触って確認します。少しでも不安に感じたら、専門知識のある第三者の整備工場などで購入前点検(インスペクション)を依頼することも有効な手段です。
- 過去のメンテナンス履歴を重視する:過去の点検整備記録簿がしっかりと残っている車両は、前のオーナーがどのように車を扱ってきたかが分かる貴重な情報源です。定期的にエンジンオイルや消耗品が交換されているかを確認することで、その車の「健康状態」を推し量ることができます。
- 必ず試乗して五感で確かめる:スペックや写真だけでは分からないことが、試乗をすれば全て分かります。車の基本的な動作(走る、曲がる、止まる)に異常がないか、エンジンや足回りから異音や不快な振動がないか、シートの座り心地は自分に合うかなど、自分の五感をフル活用して車の状態を確かめることが、中古車選びで最も重要なプロセスです。
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これらの点を踏まえ、焦らず、そして価格だけでなくコンディションを重視して、信頼できる販売店で納得のいく一台を見つけることが、素晴らしいマスタングライフへの第一歩となります。
まとめ:アメ車入門にマスタング 5代目は最適
- 5代目マスタングは2005年から2014年まで生産されたS197型
- 初代を現代に蘇らせたレトロフューチャリズムデザインが最大の特徴
- 2010年モデルを境に内外装が大きく進化した前期型と後期型に分かれる
- 決定的な違いは2011年モデル以降に搭載された新世代エンジン群
- 後期型の3.7L V6は305馬力とパワフルで軽快な走りが魅力の狙い目モデル
- GTに搭載された5.0L Coyote V8は傑作と名高い高回転型エンジン
- 全幅1.9m近いボディサイズは日本の道路では大きいが運転は慣れでカバー可能
- 年間維持費は税金や燃料費を含めGTで43万円以上を見ておくのが現実的
- 最も有名な弱点は多くの個体に見られるアルミ製ボンネット先端の腐食
- 前期V6はタイミングチェーンの異音、後期MTはミッションの操作感に注意
- 中古車価格は非常にこなれており前期型なら100万円台から探すことも可能
- 走行性能と満足度を求めるなら予算を上げてでも2011年以降のモデルを推奨
- 世界中に豊富なカスタムパーツが存在し自分好みの一台に仕上げる楽しみがある
- 定番のウィークポイントを理解し適切な個体を選べば信頼性も高く維持しやすい
- 手頃な価格で本物のマッスルカー体験ができる最高の入門車であり、価値ある一台