ホンダが世界に誇るスーパーカー、nsxna2について、その深淵を覗いてみたいと思っていませんか?NSX NA2 とは一体どのような進化を遂げた車で、伝説の始まりである初代とのNSX NA1 NA2 違いは何なのか。
そして、心臓部であるNSX NA2 エンジン 排気量の拡大や、操る喜びを増幅させたNSX NA2 6速MTの採用が、その走りをどう変えたのか、気になっている点は多いはずです。
また、デザインの大きな転換点となったNSX NA2 リトラクタブルライトの廃止といったNSX NA2 前期 後期 違い、純粋な速さを追求した究極のモデル、NSX タイプR 02Rの孤高の存在。
さらには、多くの人々が疑問に思うホンダNSX なぜ高い 理由、その背景にあるNSX 生産台数 希少価値についても、徹底的に掘り下げていきます。
この記事では、NSX NA2 新車価格 当時の時代背景から、激しく変動する初代NSX 中古 価格推移、未来のオーナーに向けた賢いNSX 中古 選び方、そして避けては通れないNSX NA2 故障 注意点や具体的なNSX NA2 維持費 年間まで、栄光のNSX 開発ストーリーを交えながら、あなたの知的好奇心を完全に満たす情報をお届けします。
- NSX NA2が遂げた「深化」の歴史と、それを支えたホンダの技術的特徴がわかる
- 標準車からタイプRまで、グレードごとの明確な違いとモデル選びの核心的なポイントを学べる
- 現在の市場価値を形成する歴史的背景や、価格高騰の具体的な理由を深く把握できる
- 購入後に直面する可能性のある故障リスクや、現実的な年間維持費を計画的に理解できる
伝説の熟成、ホンダnsxna2の進化の軌跡
- NSX 開発ストーリーから知るNSX NA2 とは
- 熟成の証し NSX NA1 NA2 違いを比較
- NSX NA2 エンジン 排気量拡大と6速MT
- NSX NA2 前期 後期 違いとリトラクタブルライト
- 究極の存在 NSX タイプR 02Rを解説
NSX 開発ストーリーから知るNSX NA2 とは

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ホンダNSX(NA2)は、1997年に登場した、初代NSX(NA1)の改良進化モデルです。
しかし、これを単なるマイナーチェンジと捉えるのは早計でしょう。NA2は、初代が1990年に世界に提示した「新世代スーパースポーツ」という革命的なコンセプトを、時代の要求に合わせて熟成させ、より高次元へと導いた「深化」の結晶です。
その開発の根底には、NSXというプロジェクトが当初から掲げていた「絶え間ない進化」というテーマが、力強く脈打っています。
この車を理解する上で絶対に欠かせないのが、開発責任者を務めた上原繁氏が提唱した「快適F1」という、他に類を見ない独創的な開発哲学です。
これは、F1マシンを頂点とする究極の運動性能と、誰もが日常の領域でその片鱗を味わえる快適性・操作性を、かつてないレベルで両立させるという壮大な目標でした。当時のスーパースポーツが、性能のためならドライバーの犠牲は厭わないという「マシン中心主義」で設計されていたのに対し、ホンダはドライバーの視界やペダルレイアウトを最優先する、徹底した「人間中心」のアプローチを貫きました。
この思想こそ、NSXが今なお多くのドライバーを魅了してやまない本質的な理由なのです。
NA2への移行は、初代のネガを潰すためのものではなく、完璧さのさらなる追求から生まれました。フェラーリやポルシェといった競合が次々と新型プラットフォームを投入する中、ホンダは世界初オールアルミ・モノコックボディという自らが作り上げた傑作のポテンシャルを信じ、それを熟成させる道を選びました。
むやみにパワーを追い求めるのではなく、より強力な心臓部(C32Bエンジン)と、それを操るための洗練された神経系(6速MT)を与えることで、動的性能そのものを引き上げる。これこそ、日本のものづくりにおける「改善」の思想をスーパースポーツの世界で体現した、ホンダならではの孤高の哲学と言えるでしょう。
豆知識:開発者が目指した「操る喜び」の深化
開発チームは、初代に向けられた「完璧すぎて、まるで優等生のようだ」という評価にも真摯に向き合いました。
その非の打ちどころのない完成度の中に、さらなる官能的な刺激と、乗り手を選ぶような緊張感、そしてそれを乗りこなした時の「操る喜び」を注入しようとする試みこそ、後のタイプSや究極のタイプRといった、より先鋭化されたモデルを生み出す原動力となったのです。
熟成の証し NSX NA1 NA2 違いを比較
NSXのNA1とNA2は、一見すると非常によく似たスタイリングを持っていますが、その内部、特に走行性能を司る核心部分において大きな進化を遂げています。特にマニュアルトランスミッション搭載車では、パワートレインが全面的に刷新され、その走りの質感を大きく変えました。
ここでは、両者の具体的な違いをスペック表で比較し、NA2がどのような「深化」を達成したのかを明らかにします。
最大の変更点は、前述の通り3.2Lへの排気量アップと、ギアを1段追加した6速マニュアルトランスミッションの採用です。
これにより、NA2はNA1よりも全域でトルクが厚くなり、アクセル操作に対する応答性が向上。
高速道路の合流や追い越し加速といった実用域から、サーキットでの立ち上がり加速まで、あらゆる速度域でNA1を上回る力強さを手に入れました。
また、後期型ではヘッドライトの固定化やタイヤ・ホイールの大径化など、空力性能とメカニカルグリップを高めるための地道な改良が、着実に積み重ねられています。
項目 | NSX (NA1) 初期型 | NSX (NA2) 前期型 |
---|---|---|
エンジン形式 | C30A (V型6気筒 DOHC VTEC) | C32B (V型6気筒 DOHC VTEC) |
総排気量 | 2,977cc | 3,179cc |
最高出力 | 280PS / 7,300rpm | 280PS / 7,300rpm |
最大トルク | 30.0kgf·m / 5,400rpm | 31.0kgf·m / 5,300rpm |
トランスミッション | 5速MT | 6速MT |
タイヤサイズ (前) | 205/50ZR15 | 215/45ZR16 |
タイヤサイズ (後) | 225/50ZR16 | 245/40ZR17 |
ヘッドライト | リトラクタブル式 | リトラクタブル式 (後期型で固定式に変更) |
このように、スペックを比較するだけでもNA2がNA1の基本性能を確実に底上げし、より速く、より洗練されたスーパースポーツへと熟成されていることが明確に見て取れます。これらの変更は、単なる数値の向上だけでなく、ドライビングの質感そのものを一段上のステージへと引き上げるものでした。
NSX NA2 エンジン 排気量拡大と6速MT

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NA2のキャラクターを決定づける最大の進化、それは心臓部であるC32B型V6 VTECエンジンの搭載に他なりません。
これは、従来のC30A型をベースとしながらも、排気量を2,977ccから3,179ccへと拡大したものです。
しかし、その手法は単なるボアアップではありませんでした。シリンダーのボア径を90mmから93mmへと広げるにあたり、ホンダはエンジンブロックの基本設計を維持したまま強度を確保するため、当時最先端の素材技術であった「FRM(Fiber Reinforced Metal)」、
すなわち繊維強化金属製のシリンダースリーブを採用しました。これにより、薄肉化と高強度化を両立させ、信頼性を一切損なうことなく排気量アップを実現したのです。
最高出力こそ、当時の国内メーカー自主規制値である280馬力に据え置かれましたが、大幅に増強された中低速トルクは、実用域での扱いやすさと全域での加速性能を大幅に向上させました。
さらに、アクセルペダルの動きを物理的なワイヤーではなく電気信号でスロットルバルブに伝える「DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)」を国産MT車として初期に採用。これにより、TCS(トラクション・コントロール・システム)との協調制御をより緻密に行えるようになり、ドライバーの意思に、より忠実でリニアなスロットルレスポンスを獲得しました。
C32Bエンジンと6速MTが織りなす相乗効果
増大したエンジンのパワーとトルクを、余すことなく路面へと伝えるために新開発されたのが、新設計の6速マニュアルトランスミッションです。
従来の5速MTが収まっていた限られたスペースに6速化を実現するため、より高強度なギア素材の採用による歯厚の薄肉化や、クラッチをツインプレートからコンパクトなシングルプレートへ変更するなど、ホンダならではの独創的なパッケージング技術が投入されました。
1速から5速までは加速を重視したクロスレシオ設定とされ、一方で6速は高速巡航時の静粛性と燃費を考慮したオーバードライブレシオに設定。
この絶妙なギアリングと、ショートストローク化された確かなシフトフィールが、C32Bエンジンの性能を最大限に引き出し、NSXを操るという行為そのものを、より官能的で満足度の高いものへと昇華させたのです。
NA1についてはこちらにまとめてあります。
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NSX NA2 前期 後期 違いとリトラクタブルライト

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NSX NA2は、1997年の登場から2005年の生産終了までの間に、一度だけ大きなマイナーチェンジを実施しています。一般的に、2001年末に発表された2002年モデルを境に「前期型」と「後期型」に分類され、両者の間には特にエクステリアデザインにおいて、一目で識別できるほどの明確な違いが存在します。
その最も象徴的な変更点が、1980年代からスーパースポーツのアイコンとして親しまれてきたリトラクタブル(ポップアップ)式ヘッドライトの廃止です。
後期型では、軽量でデザイン自由度の高い固定式のプロジェクタータイプヘッドライトへと変更されました。
この決断の裏には、明確な機能的理由がありました。リトラクタブル式は、ライト展開時に空気抵抗を増大させ、高速域でのフロントリフト(車体を持ち上げる力)を発生させてしまうという空力的な弱点を抱えていたのです。
固定式への変更は、Cd値(空気抵抗係数)を維持しつつ、車体のリフトバランスを最適化し、超高速域での操縦安定性を向上させるという、性能を最優先するNSXの哲学を明確に示したものでした。(参考:本田技研工業株式会社 )
リトラクタブルライトはスーパーカーの象徴でしたから、無くなったときは寂しい気もしました。しかし、これも全てはコンマ1秒を削る「速さ」のためだったのですね。技術者の執念を感じます。
ヘッドライト以外にも、後期型ではフロントバンパー、サイドシルガーニッシュ、リアバンパーのデザインが一新されています。
これらも単なる意匠変更ではなく、空気の流れをよりスムーズにボディ下面へと導き、フロア下の整流効果を高めるための機能的な改良でした。同時に、タイヤとホイールも前後共に17インチへと大径・ワイド化され、増大したグリップ性能に対応すべくサスペンションも再チューニングされるなど、全身にわたって細やかな熟成が図られています。
デザインの好みは重要な選択基準
性能面では後期型に軍配が上がるものの、前期型のリトラクタブルライトが持つノスタルジックでアイコニックな魅力を愛するファンも少なくありません。
どちらのデザインが優れているかは一概には言えず、完全に個人の好みに委ねられます。中古車を選ぶ際には、このデザインの違いがご自身の感性に合うかどうかを、性能と同じくらい重要な判断基準とすべきでしょう。
究極の存在 NSX タイプR 02Rを解説

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NSXの輝かしい歴史の最終章を飾るモデル、それが2002年に登場した最終進化形「NSX-R(通称02R)」です。これは、NA2が市販車として、そしてJGTC(全日本GT選手権)というモータースポーツの最前線で10年以上にわたって蓄積してきた知見と技術の全てを、一切の妥協なく注ぎ込んだ究極のピュアスポーツモデルに他なりません。
02Rを開発する上で掲げられたコンセプトは「空力操安(くうりきそうあん)」。これは、エアロダイナミクスを単なる最高速向上のためのツールではなく、サスペンションの一部として積極的に利用し、コーナリング性能や操縦安定性を劇的に向上させるという、当時としては極めて先進的な考え方でした。
その思想の到達点こそ、日本の量産市販車として初めて、車体全体で真のマイナスリフト(ダウンフォース)を発生させることに成功したという偉業です。レースカー譲りのエアアウトレット付きカーボンファイバー製ボンネット、車体下面の気流を整えるフロントアンダーカバー、そして強力な負圧を発生させるカーボンファイバー製リアディフューザーと大型リアスポイラー。
これら全てが連携し、文字通りマシンを路面に吸い付かせることで、異次元のコーナリングスピードを実現しました。
そして、その心臓部もまた特別な仕立てでした。搭載されるC32Bエンジンは、スペックシート上の数値こそ標準車と変わりませんが、その組み立て工程が全く異なります。クランクシャフト、ピストン、コンロッドといった主要な回転部品が、レーシングエンジンと同じ精度管理のもとで、一つ一つ手作業で精密に重量バランス取りされていたのです。
これにより、機械的なフリクションロスが極限まで低減され、標準エンジンとは比較にならないほど鋭敏で、まるでモーターのように滑らかに、そして官能的なサウンドを奏でながら8,000rpmまで吹け上がるフィーリングを実現しています。
快適装備を徹底的に排除し、遮音材を剥ぎ取り、薄板ガラスを採用するなど、グラム単位の軽量化を施された02Rは、一見するとスパルタンなだけのモデルに思えるかもしれません。しかし、それはNSXが誕生以来持ち続けてきた「人間中心」の哲学が、速さを追求する中で最も純粋な形で表現された姿なのです。
nsxna2の現在価値とオーナーズガイド
- NSX NA2 新車価格 当時はいくらだったか
- ホンダNSX なぜ高い 理由と生産台数 希少価値
- 初代NSX 中古 価格推移と市場の動向
- 後悔しないNSX 中古 選び方のポイント
- NSX NA2 故障 注意点とNSX NA2 維持費 年間
- 色褪せない価値を持つスーパーカーnsxna2
NSX NA2 新車価格 当時はいくらだったか
今や一流のコレクターズアイテムとして、時に投機対象ともなるほどの高値で取引されるNSX NA2ですが、それが生まれた当時の新車価格はどの程度だったのでしょうか。NA2が発売された1997年当時の価格を知ることは、この車が持つ本来の価値を理解する上で非常に重要です。
1997年2月に登場したNA2のベースグレード(クーペ・6速MT)のメーカー希望小売価格は985.7万円(消費税含まず)でした。
そして、足回りを引き締め、専用シートなどを装備したスポーティグレードの「タイプS」が1,035.7万円、そこからさらにエアコンやオーディオといった快適装備を排除して徹底的な軽量化を図った「タイプS Zero」が985.7万円(タイプSからのレスオプション設定)という価格体系でした。
これは当時の国産車としては突出して高価であり、同時代の国産高性能スポーツカーの代表格であったスカイラインGT-R(R33)やスープラ(JZA80)のおおよそ2倍に相当する価格でした。まさに、日本の自動車技術の粋を集めたフラッグシップモデルであったことが、この価格からも明確にわかります。
現在の価値に換算すると?
例えば、総務省統計局が公表している消費者物価指数を参考にすると、1997年当時の1,000万円は、現在の価値でおおよそ1,100万円以上に相当します。これを踏まえると、NSXがいかに高価な車であったかがより実感できるのではないでしょうか。
そして、2002年に登場した究極のモデル「NSX-R」に至っては、1,195.7万円(消費税含まず)という、まさに別格の価格が付けられていました。バブル経済がとうに崩壊し、「失われた10年」と呼ばれた経済停滞期の日本において、この価格設定で市販に踏み切ったこと自体が、ホンダのNSXという車に対する揺るぎない自信と誇りの表れだったと言えるでしょう。
ホンダNSX なぜ高い 理由と生産台数 希少価値

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「ホンダNSXは、なぜこれほどまでに高いのか?」これは、現在の市場価格を目の当たりにした多くの人が抱く素朴な疑問です。その価格が高騰している理由は、単に「性能の良い古いスポーツカーだから」という単純なものではありません。そこには、NSXという車が持つ、他にはない複数の本質的な価値が複雑に絡み合っています。
1. 生産に要した莫大なコストと手間
最大の理由は、その生産方法にあります。NSXの最大の特徴である世界初のオールアルミ・モノコックボディは、軽量化と高剛性を両立する画期的なものでしたが、その製造にはスチールボディのようにはいかず、熟練工による多くの手作業と特殊な溶接技術を必要としました。
そのため、NSXは栃木県に建設された専用工場で、選び抜かれた職人たちの手によって、最盛期でも1日にわずか25台というペースで、一台一台丹念に生産されていたのです。
2. 圧倒的な生産台数の少なさ(希少価値)
そしてもう一つが、その絶対的な生産台数の少なさです。NSXは、1990年9月から2005年12月までの約15年間にわたり生産されましたが、そのグローバルでの総生産台数は約18,734台です。この数字は、例えば同時代に生産されたポルシェ911(996型)が17万台以上生産されたことと比較すると、いかに少ないかがわかります。
その中でもNA2はさらに少なく、特に究極のモデルである2002年型NSX-Rは、前述の通り日本国内ではわずか140台しかラインオフされていません。この圧倒的な希少価値が、コレクターズアイテムとしての価値を決定づけ、現在の価格を押し上げる最大の要因となっています。
価格を支える3つの本質的価値
- 革新的な技術:オールアルミボディという、時代を先取りした唯一無二の構造を持つ。
- クラフトマンシップ:専用工場で熟練工が手掛けた、工芸品にも近い品質を持つ。
- 絶対的な希少性:総生産台数が極めて少なく、特に後期型や特別グレードは入手困難。
これらの理由から、NSXは単なる「中古車」ではなく、自動車史にその名を刻む「歴史的遺産(ヘリテージ)」として評価されるようになり、その価値が年々上昇し続けているのです。
初代NSX 中古 価格推移と市場の動向
初代NSX、特にNA2の中古車価格は、ここ10年ほどで劇的かつ一貫した上昇を続けています。かつては700万円~800万円台でも良質な個体を探すことができた時代もありましたが、現在ではその状況は完全に過去のものとなりました。
市場は明確な右肩上がりのトレンドを示しており、特にコンディションの良いNA2モデルや希少グレードは、当時の新車価格をはるかに上回るプレミア価格で取引されるのが常識となっています。
例えば、走行距離が少なく、内外装の状態が極めて良好なNSX-R(02R)には、5,000万円を超えるプライスボードが掲げられることも珍しくありません。標準的なNA2のMT車であっても、1,200万円~1,500万円が現在の相場となりつつあり、もはや一部の富裕層や熱心なコレクターでなければ手の届かない領域へと移行しつつあります。
この世界的な価格高騰の背景には、海外、特にアメリカの通称「25年ルール」の影響が大きいと言われています。これは、製造から25年が経過した車両は米国の安全基準や排ガス基準の適用が免除され、クラシックカーとして比較的容易に輸入・登録が可能になるというものです。
1990年に登場したNSXが2015年頃からこのルールの対象となり始めたことで、海外のコレクターからの需要が爆発的に増加。日本のオークション会場でも海外バイヤーによる買い付けが活発化し、国内の中古車市場から優良な個体が急速に減少したことが、価格上昇に拍車をかけています。
今後、世界中の自動車が電動化へとシフトしていく中で、NSXが持つ高回転型自然吸気V6エンジンとマニュアルトランスミッションという組み合わせは、二度と新車では現れないであろう「失われた技術」の象徴となります。その歴史的価値は、今後さらに高まっていく可能性が高いでしょう。
後悔しないNSX 中古 選び方のポイント

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憧れのNSXを手に入れるという夢を叶えるためには、後悔のない、慎重かつ戦略的な個体選びが不可欠です。非常に高価な買い物となるからこそ、感情だけでなく、冷静な目でチェックすべきポイントがいくつか存在します。
1. グレードとトランスミッションを明確にする
まずは、数あるNSXの中からどのモデルが自身のライフスタイルや価値観に合っているかを明確にしましょう。日常的な快適性も重視し、グランドツアラーとして楽しみたいなら標準車。
よりダイレクトなハンドリングと刺激を求めるなら「タイプS」。そして、サーキット走行を視野に入れ、NSXのポテンシャルを極限まで引き出したいのであれば、究極の「NSX-R」が候補となります。
また、トランスミッションは、圧倒的にマニュアル車(MT)の人気が高く、リセールバリュー(資産価値)も高い傾向にあります。AT車(Fマチック)は比較的安価に購入できますが、「快適F1」の神髄であるダイレクトな操縦感覚を存分に味わうなら、MT車を選ぶことを強く推奨します。
2. 車両のコンディションを細部まで徹底的にチェックする
NSXは生産から20年以上が経過したクラシックカーの領域にあるため、車両の状態は個体によってまさに千差万別です。特に重要なチェックポイントは以下の通りです。
- 修復歴の有無:NSXの生命線であるオールアルミボディは修理が非常に難しく、不適切な修理がされているとボディ剛性の低下や走行安定性の悪化に直結します。必ず信頼できる第三者機関(JAAAなど)の鑑定書が付いている車両を選びましょう。
- 整備記録簿の確認:過去のメンテナンス履歴が詳細に記録された整備記録簿は、その車がどのように扱われてきたかを示す最も信頼できる書類です。特に、タイミングベルトやクラッチといった高額な消耗部品の交換履歴は必ず確認すべきです。
- 各部の動作確認:パワーウィンドウやエアコン、ABSといった電装系の動作はもちろん、サスペンションのブッシュ類の劣化具合(異音や乗り心地の悪化)なども実車で確認することが重要です。
3. 信頼と実績のあるNSX専門店で購入する
そして、最も重要なのが、NSXに関する深い知識と豊富な整備実績を持つ専門店で購入することです。NSXは構造が特殊なため、一般的な中古車販売店ではその価値や状態を正確に見抜くことが困難な場合があります。
専門店であれば、NSX特有のウィークポイントを熟知した上で納車前点検整備を行ってくれるだけでなく、購入後のメンテナンスや万一のトラブルにも的確に対応してくれる、心強いパートナーとなります。
「焦り」と「妥協」は最大の敵!
希少価値の高さから、良い条件の個体は市場に出るとすぐに売れてしまうこともありますが、だからといって焦ってコンディションの悪い車に手を出すのが、最も大きな後悔に繋がります。
「この一台を逃したら次はないかもしれない」という気持ちは分かりますが、時間をかけてじっくりと、信頼できる販売店と共に理想の一台を探し出すという冷静な姿勢が、成功への唯一の道です。
NSX NA2 故障 注意点とNSX NA2 維持費 年間

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NSXとのカーライフを実現する上で、避けては通れないのが故障のリスクと、それを維持していくためのコストの問題です。ホンダ車ならではの高い信頼性を持つNSXですが、生産から20年以上が経過した精密機械である以上、経年劣化による特有のウィークポイントが存在します。
NSX特有の「持病」とされる故障箇所
長年にわたり多くのオーナーたちが経験してきた、NSX特有の「持病」として知られている代表的なトラブルがいくつかあります。未来のオーナーとして、これらのウィークポイントと、その修理にかかる費用感を事前に把握しておくことは非常に重要です。
システム | 主な症状 | 対策・修理内容 | 費用概算 |
---|---|---|---|
ブレーキ | ABSやTCSの警告灯が走行中に点灯、または点灯しっぱなしになる。 | ABSモジュレーター内部の圧力スイッチ等の故障。ユニットのオーバーホール(O/H)が必要。 | 10万円~20万円 |
空調 | エアコンの液晶表示が消える、勝手に作動する、温度調整が効かない。 | コントロールユニット基板上の電解コンデンサの液漏れ。基板洗浄とコンデンサ交換が必要。 | 5万円~8万円 |
内外装 | パワーウィンドウの動きが遅い、途中で止まる、異音がする。「窓落ち」と呼ばれる症状。 | ウィンドウレギュレーターのギアやガイド樹脂の破損。レギュレーター本体の交換が必要。 | 4万円~7万円 (片側) |
駆動系 | 特定のギア(特に2速や3速)に入れる際に「ガリッ」という異音(ギア鳴り)がする。 | トランスミッション内部のシンクロナイザーリングの摩耗。ミッションのO/Hが必要。 | 30万円~60万円 |
特にABSモジュレーターとエアコンコントロールユニットの故障は、ほぼ全ての個体でいずれ経験する定番トラブルと言われています。これらの修理には専門的な知識と技術が必要となるため、NSXに精通した信頼できる整備工場を見つけておくことが、安心して所有するための絶対条件となります。
気になる年間の維持費はどのくらい?
NSXを所有した場合の年間維持費は、車両の状態や年間の走行距離、保管環境によって大きく変動しますが、一般的な目安として、大きなトラブルがない場合でも年間50万円~100万円程度を見込んでおくと安心です。その主な内訳は以下のようになります。
- 税金類:自動車税(製造から13年超の重課措置対象で約10万円)、重量税(車検時)
- 保険料:任意保険(車両保険の料率が高いため、年齢や等級によるが10万円~20万円以上)
- 基本メンテナンス費用:エンジンオイル交換(年2回)、タイヤ代、2年ごとの車検基本料など(20万円~50万円)
- ガソリン代:ハイオク仕様で燃費はリッター6~8km程度。走行距離に応じて変動します。
これに加えて、前述のような予期せぬトラブルが発生した場合の修理費用や、性能を維持するための予防的な部品交換(ブッシュ類、センサー類など)の費用も別途考慮しておく必要があります。
ホンダ自身が提供するリフレッシュプラン(Honda公式サイト NSXリフレッシュプラン)を利用するのも、車両を最高のコンディションに保つための一つの選択肢です。
色褪せない価値を持つスーパーカーnsxna2
最後に、ホンダ NSX(NA2)という、時代を超えて輝き続けるスーパーカーの要点をリスト形式でまとめます。
- NSX NA2は初代NA1をベースに走行性能と洗練性を高次元で両立させた「深化」版モデルである
- 開発哲学はF1の運動性能と日常の快適性を融合させる「快適F1」という唯一無二のコンセプト
- NA1との最大のハードウェア的な違いは3.2リッター化したC32Bエンジンと6速MTの採用
- C32BエンジンはFRMスリーブやDBWといった当時のホンダの先進技術を結集した傑作
- 新開発の6速MTはエンジンの性能を最大限に引き出し操る喜びを増幅させるために不可欠な装備
- 後期型では空力性能向上のため象徴的だったリトラクタブルライトが固定式に変更された
- NSX-R(02R)は「空力操安」をコンセプトに掲げダウンフォースを追求した究極のピュアスポーツ
- 02Rのエンジンはレーシングエンジン同様の精度で手組みされた特別な心臓部を持つ
- 当時の新車価格は標準車で約1000万円からと国産車としては突出して高価だった
- 現在の価格高騰はオールアルミボディの製造コストや手作業による生産、絶対的な希少価値が理由
- 中古車市場は海外需要もあり右肩上がりで、今後も資産価値が維持される可能性が高い
- 後悔しない中古車選びには修復歴の確認とNSXに精通した専門店の利用が絶対条件である
- ABSモジュレーターやエアコンユニットは経年劣化による定番のウィークポイントとして知られる
- 年間の維持費は税金や保険、メンテナンス費用を含め、トラブルが無くても50万円以上が目安となる
- メーカー自身もリフレッシュプランを提供しており、歴史的遺産として後世に残す体制が整っている