AE86レビンの購入を検討する中で、前期型と後期型のどちらを選ぶべきか、具体的な違いが分からず悩んでいませんか。
1980年代を代表するライトウェイトスポーツとして、今なお伝説的な人気を誇るAE86ですが、その魅力の深層に触れるためには、約4年間のモデルライフの中で施された熟成の歴史、つまりae86 レビン 前期後期 違いを正確に理解することが不可欠です。
AE86には前期と後期の年式による違いはもちろん、細かく見ればAE86の1型・2型・3型の違いも存在し、それぞれに異なる個性と魅力が宿っています。AE86の前期と後期の見分け方をはじめ、AE86の外装の違い、特にリアビューの印象を決定づけるAE86のテールランプの前期・後期における変更点、そしてドライバーが常に触れるAE86の内装の違いまで、その差異は多岐にわたります。
さらに、走りの核心である名機4A-G型、AE86のエンジンの違いや、スポーツ走行での信頼性に直結するAE86のドライブシャフトの太さといった機関部の改良点も見逃せません。
また、兄弟車であるAE86のレビンとトレノの違いや、結局レビンとトレノでは人気はどっちなのかという市場価値の変動、そしてAE86の2ドアと3ドアの違いといったボディ形状の特性も、理想の一台を見つける上での重要な判断材料となります。
これらの知識は、AE86の中古車選び方で前期・後期モデルを的確に見極める際に必ず役立ち、AE86の車体番号の見方と合わせれば、より深く車両の出自や状態を把握できるでしょう。この記事では、それら全ての疑問に答えるべく、前期・後期モデルの進化の軌跡を、より深く、そして徹底的に解剖していきます。
この記事で分かること
- 前期型と後期型の具体的な年式と、プロが見る詳細な見分け方
- 外装・内装・機関部における詳細な変更点とその背景にある進化の内容
- 兄弟車トレノとの関係性や、ボディ形状がもたらす走行特性の違い
- 製造から約40年を経たAE86の中古車選びで失敗しないための具体的チェックポイント
基礎から学ぶAE86 レビン 前期後期 違い

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このセクションのポイント
- AE86の前期と後期の年式を解説
- AE86前期・後期の簡単な見分け方
- 参考:レビンとトレノ、人気はどっち?
- 参考:AE86の2ドアと3ドアの違い
- AE86の外装に見る前期・後期の違い
AE86の前期と後期の年式を解説
AE86レビンを深く理解するための第一歩は、前期型と後期型のモデルライフ期間を正確に把握することです。この時期の違いが、全ての差異の基本となります。
結論から言うと、AE86は1985年5月に行われたマイナーチェンジを明確な境界線として、前期型と後期型に分類されます。それぞれの製造期間は以下の通りです。
AE86の製造期間
- 前期型(通称:Zenki):1983年5月 – 1985年4月
- 後期型(通称:Kouki):1985年5月 – 1987年4月
このマイナーチェンジは、単なる内外装の意匠変更、いわゆるフェイスリフトに留まるものではありませんでした。モータースポーツシーンからのフィードバックも取り入れ、走行性能や信頼性に関わる機関部にまで及ぶ大規模なものでした。そのため、前期型と後期型では、単に見た目が違うだけでなく、乗り味や耐久性、そしてメンテナンスにおける注意点にも違いが生まれています。
ちなみに、AE86にはさらに細かい「型」による分類も存在します。これはマイナーチェンジとは別の、年次改良による区分です。
- 1型:1983年のデビュー当初のモデル。
- 2型:1984年頃に一部改良が加えられた前期型。可倒式ドアミラーの採用などが主な変更点です。
- 3型:1985年5月以降の後期型全体を指します。
ただし、中古車市場やオーナー間の会話で最も意識されるのは、やはり前期・後期の大きな括りです。まずはこの1985年5月というタイミングが、AE86を語る上での重要な基準点になると覚えておくことが重要になります。
AE86前期・後期の簡単な見分け方
専門的な知識がなくても、AE86の前期型と後期型を瞬時に見分ける方法がいくつかあります。エクステリアで最も分かりやすいのは、フロントバンパーとウインカーレンズの形状です。ここを見れば、一目でどちらのモデルか判断できます。
レビンの場合、前期型はバンパーが比較的小ぶりでシャープな印象を与え、ウインカーレンズが縦方向に厚みのあるスクエアな形状をしています。一方、後期型になると、当時のデザイントレンドを反映してバンパーが大型化され、ボディと一体感のあるよりボリュームのあるデザインへと変更されました。
それに伴い、ウインカーレンズはシャープな横長のデザインになり、ヘッドライトの横に新たにコーナリングランプが新設されたのが決定的な特徴です。
街中でAE86レビンを見かけたら、まずはフロントバンパーとウインカーに注目してみてください。
この部分を見るだけで、前期か後期かを8割以上の確率で判断できるはずですよ。後期型のコーナリングランプは、夜間の右左折時に進行方向を照らしてくれる実用的な装備でもありました。
また、詳細は後述しますが、リアのテールランプのデザインも大きく異なります。内装に目を向けると、シートやダッシュボードのカラーコーディネートが全く違います。前期型は赤茶系(ワインレッド)や青系といった、80年代の雰囲気を色濃く反映したカラーが特徴的です。
対照的に、後期型は黒やグレーを基調としたモノトーンで統一され、よりモダンでスポーティーな雰囲気へと変更されています。これらのエクステリアとインテリアのポイントを知っておくだけで、中古車販売店での実車確認の際に、年式をごまかされていないかなどを判断する材料にもなります。
参考:レビンとトレノ、人気はどっち?

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AE86を語る上で避けて通れないのが、同じ型式を持ちながら異なる個性を持つ兄弟車、「スプリンタートレノ」の存在です。
レビンが固定式の角目2灯ヘッドライトによる精悍なマスクを持つのに対し、トレノは当時流行の最先端であったリトラクタブル(格納式)ヘッドライトを採用しているのが最大の違いになります。
新車販売当時は、モータースポーツ、特にレースシーンでの活躍イメージが強かったこともあり、よりレーシーでスポーティーな印象のレビンの方が人気は高く、販売台数もトレノの倍近い差をつけていました。
新車販売台数(推定)
- カローラレビン:約66,000台
- スプリンタートレノ:約35,000台
しかし、この人気構図は1990年代半ばに連載が開始された漫画『頭文字D』によって劇的に、そして決定的に変化します。ご存知の通り、主人公がスプリンタートレノ(3ドア)を駆っていたことから、トレノの人気が国内外で爆発的に高まりました。
この作品が与えた文化的影響は絶大で、現在の中古車市場では、かつて少数派だったトレノ、特に「パンダ」と呼ばれる白黒ツートンの3ドアモデルが、レビンを凌ぐ圧倒的なプレミアム価格で取引されるという「人気の逆転現象」が起きています。
言ってしまえば、レビンは当時のレースシーンを彷彿とさせる硬派でオーセンティックな魅力、トレノは物語性やキャラクター性という唯一無二の文化的な価値を背景に持つと言えるでしょう。どちらを選ぶかは、個人の好みやAE86に何を求めるか、その価値観によって大きく変わってくるのです。
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参考:AE86の2ドアと3ドアの違い
AE86には、独立したトランクルームを持つセダンライクな「2ドアクーペ」と、大きなリアゲートを備えた「3ドアハッチバック」の2種類のボディ形状が存在します。この違いも、AE86のキャラクターや使われ方を大きく左右する重要な要素です。
3ドアハッチバックの特徴
一般的に「ハチロク」と聞いて多くの人がイメージするのが、この3ドアハッチバックでしょう。『頭文字D』の主人公の愛車もこのタイプでした。
大きな開口部を持つリアゲートのおかげで荷物の積載性に優れ、後席を倒せば交換用のタイヤ4本と工具箱を楽に積むことが可能でした。この高いユーティリティ性が、サーキットや峠に自走で通う走り屋たちから絶大な支持を受け、特にドリフトなどのモータースポーツシーンで人気を博した大きな理由です。
2ドアクーペの特徴
一方の2ドアクーペは、ボディ後部に大きな開口部がない「箱」構造のため、原理的にボディ剛性が3ドアよりも高いという明確なメリットがあります。
ボディ剛性が高いということは、コーナリング中や加減速時に車体のねじれが少なく、サスペンションが設計通りに、より正確に作動することを意味します。結果として、シャープで応答性の高いハンドリングに繋がりやすいのです。
そのため、コンマ1秒を争うグリップ走行を主体とするレースやジムカーナでは、クーペボディを好んで選択するトップドライバーも少なくありませんでした。
見逃せない重量とグレードの差
注意点として、2ドアクーペは3ドアハッチバックよりも車両重量が約10kg軽いという特徴もあります。
これは現代の車では僅かな差ですが、車重1トン未満のAE86にとっては無視できない要素です。
さらに、走りに特化したスパルタンなグレード「GTV」は3ドアにしか設定されず、逆に競技ベースの最廉価グレード「GT」は2ドア専用(後期型)という違いもありました。中古車選びの際は、見た目の好みだけでなく、こうした構造上の違いやグレード展開も考慮に入れると、より自分の目的に合った一台を見つけることができるでしょう。
AE86の外装に見る前期・後期の違い

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前期型と後期型では、エクステリアデザインに明確な違いが設けられています。前述のフロントバンパー以外にも、年月の経過と共に熟成された細かな変更点がいくつも存在します。
フロントマスクの進化
レビンのフロントマスクは、後期型でバンパーが大型化されたことに加え、フロントグリルのデザインもより洗練された横基調のものに変更されています。
前期の最上級グレード「GT-APEX」には、水温に応じてグリル内のフラップが自動で開閉し、エンジンが冷えているときはグリルを閉じて空気抵抗を減らし、水温が上がると開いて冷却効率を高める「エアロダイナミックグリル」という、当時としては非常にユニークで先進的な装備もありました。
サイドビューとホイール
サイドビューでは、ボディサイドに貼られるストライプ(デカール)のデザインが前期と後期で異なります。
また、ホイールにも違いがあり、GT-APEXに標準装備されたアルミホイールは前期・後期でデザインが同じですが、スチールホイールに装着されるホイールキャップはデザインが変更されています。
ドアミラーの変遷
ドアミラーのデザインも、実は時期によって細かく異なります。ごく初期の「1型」はスプリングで戻る固定式でしたが、安全基準の改定などもあり、すぐに衝撃を受けると倒れる可倒式へと変更されました。
前期型(2型)のミラーは表面が平滑なグロス仕上げですが、後期型(3型)では表面にザラザラとしたシボ加工が施されており、無塗装ながら質感が向上しています。
本当に細かい部分ですが、こうしたディテールの違いを知っていると、より深くAE86の世界を楽しめます。オリジナルコンディションを重視するなら、ミラーの仕様も年式と合っているかチェックしたいポイントですね。レストアの際に間違ったパーツが付いていることも稀にあります。
これらの変更は、単なるデザイン変更だけでなく、80年代中盤のデザイントレンドであった「フラッシュサーフェス化(ボディ面の段差をなくすこと)」を意識した空力性能の向上や、質感アップを目的として行われました。後期型は全体的によりモダンで、塊感のある力強い印象を受けます。
詳細比較で知るAE86 レビン 前期後期 違い
このセクションのポイント
- AE86テールランプの前期・後期の違い
- AE86の内装、前期・後期の違いを比較
- AE86エンジンの前期・後期の違いは?
- 走りを左右するドライブシャフトの太さ
- AE86中古選び方と前期・後期の注意点
- 総括:ae86 レビン 前期後期 違いの魅力
AE86テールランプの前期・後期の違い

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リアビューの印象を大きく左右するテールランプも、前期・後期でデザインが刷新されています。ここは中古パーツを探す際や、レストアを行う上で非常に重要なポイントとなるため、正確に理解しておく必要があります。
後期型では、レビン・トレノともに新デザインのテールランプが採用されました。レビンの場合、前期型はウインカー部分がオレンジ色で、全体的に凹凸のあるデザインでした。後期型では、レンズ表面がスモークがかったフラットなデザインになり、ウインカー部分の上部に黒いライン(通称:スモークテール)が入ることで、より引き締まったシャープなリアビューを演出しています。
ここで最も注意すべきなのは、前述の通りボディ形状による互換性の有無です。この知識がないと、部品購入で手痛い失敗をする可能性があります。
【重要】テールランプの互換性について
- 3ドアハッチバック:前期・後期でテールランプの取り付け形状は同じなため、互換性があります。そのため、前期型のボディに後期型のテールランプを装着する(通称:後期ルック)、といったカスタマイズもボルトオンで比較的容易に行えます。
- 2ドアクーペ:前期・後期でテールランプの互換性は一切ありません。これは、後期化の際にテールランプだけでなく、ランプが取り付けられるボディのバックパネルのプレス形状自体が変更されたためです。
2ドアクーペのオーナーが事故などでテールランプを破損した場合、前期型なら前期用、後期型なら後期用のパーツしか物理的に装着できません。
近年、純正部品は次々と廃番になっているため、部品を探す際は、自身の車の年式とボディ形状を正確に把握し、適合するパーツを根気よく探すことが極めて重要です。この互換性の情報は、AE86を長期的に維持していく上で非常に大切な知識となります。
AE86の内装、前期・後期の違いを比較

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運転中に常に触れ、視界に入るインテリアも、前期と後期では乗員が受ける印象が大きく異なります。後期型では、主に質感と操作性の向上が図られました。
最大の変更点は、インテリア全体のカラーテーマです。前述の通り、前期型が赤茶系(ワインレッド)や青系といった、いかにも80年代らしい少し華やかな色使いだったのに対し、後期型はグレーや黒を基調としたシックなモノトーンのカラースキームへと全面的に変更されました。これにより、よりスポーティーで引き締まった、時代を超えても古さを感じさせにくいコクピットになっています。
さらに、ドライバーが直接操作する部分にも細かな改良が加えられています。
- メーターパネル:後期型では文字盤のグラフィックが一新され、オレンジ色の照明と合わせて視認性が向上しました。また、警告灯の配置なども見直されています。
- ステアリング:ステアリングホイールのデザインも変更されています。前期型は角ばった2本スポーク(GT-APEX)が特徴的でしたが、後期型はよりモダンな3本スポークデザインとなりました。
- スイッチ類:エアコンやデフォッガー、ハザードなどの各種スイッチのデザインも、角の取れた丸みのある、より操作しやすい形状へと変更されています。
- シート:シートの表皮デザインや材質も変更されました。特に後期型のGT-APEXのシートは、サイドサポート部の形状が見直され、コーナリング時のホールド性が向上しています。
どちらが良いというわけではなく、前期の内装には独特のレトロフューチャーな魅力がありますし、後期の内装は機能的で飽きのこない完成されたデザインです。これも完全にオーナーの好みが分かれるポイントですね。前期のワインレッド内装は、今見ると非常におしゃれに感じます。
このように、後期型の内装は全体的に熟成が進み、人間工学的な視点も取り入れられて完成度が高められているのが特徴です。
AE86エンジンの前期・後期の違いは?
AE86の魂であり、心臓部である名機「4A-GEU」型エンジン。ヤマハ発動機の技術協力によって開発されたこの1.6L DOHC16バルブエンジンは、当時の国産エンジンの中でも傑出した存在でした。基本的なスペック(最高出力130ps/6600rpm、最大トルク15.2kg-m/5200rpm ※いずれもグロス値)は、前期・後期で変更ありません。
しかし、全く同じというわけではなく、目には見えない制御系を中心に細かな、しかし重要な改良が施されています。
最も大きな違いは、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)のプログラムが変更され、制御がより緻密になっている点です。これにより、燃料噴射や点火時期の制御がさらに最適化されたと言われています。
また、プログラムの変更に伴い、エンジンルーム内の配線であるエンジンハーネスも後期型専用品へと変更されました。そのため、エンジン本体に互換性はあるものの、ハーネスやECUには前期・後期の互換性はありません。
体感できるほどの劇的なパワー差はありませんが、一般的には後期型の方が制御が洗練され、アイドリングの安定性や、全域でのトルクのツキが向上し、よりスムーズで扱いやすいフィーリングになっていると評価されています。
ただ、前期型のやや荒々しく、高回転で一気にパワーが炸裂するような吹け上がりを「キャブ車(キャブレター仕様車)のようだ」と好む熱心なファンも多く、これもまたAE86の奥深さの一つです。
補足:後期型で追加されたAT車
AE86といえば5速マニュアルトランスミッションのイメージが強いですが、後期型の最上級グレード「GT-APEX」と、その2ドア版「GT」には、電子制御4速オートマチック(ECT-S)がオプションとして追加設定されました。
パワーモードとエコノミーモードを選択できるなど、当時としては先進的なATでした。しかし、AE86のキャラクターもあって販売台数は極めて少なく、現存するAT仕様の個体は非常に稀少です。
走りを左右するドライブシャフトの太さ

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機関部における最も重要かつ有名な変更点が、ドライブシャフトの強化です。これは、AE86が全日本ツーリングカー選手権(JTC)などのモータースポーツシーンで大活躍する中で、ノーマル以上のパワーやハイグリップタイヤの装着といった、より高い負荷に対応するために行われた信頼性向上のための改良でした。
具体的には、後輪を駆動するプロペラシャフトとリアアクスルを繋ぐドライブシャフト、その中でもデファレンシャルギアに接続されるスプライン(噛み合わせるためのギザギザの部分)の直径が、以下のように変更されています。
ドライブシャフト径の変更
- 前期型:スプライン径 24mm
- 後期型:スプライン径 25mm
直径でわずか1mmの違いですが、円の断面積で考えると強度は約8.5%向上します。
スポーツ走行やチューニングでエンジンパワーを上げていくと、前期型のドライブシャフトでは強度不足でねじ切れたり、スプラインが舐めてしまったりするトラブルが実際に報告されていました。
そのため、サーキット走行やドリフトを楽しむユーザーの間では、トラブル予防のために前期型の車両に後期型の太いドライブシャフトと、それに対応するデファレンシャルギアを一式で移植することが定番のチューニングメニューとなっています。
普通に街乗りをする分には前期型のままでも全く問題ありませんが、将来的にスポーツ走行を考えているのであれば、この違いはAE86を維持していく上で非常に大きな意味を持つことを覚えておきましょう。
AE86中古選び方と前期・後期の注意点

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これまでの違いを踏まえ、実際に中古車を選ぶ際の具体的なポイントを解説します。AE86は最も新しい個体でも製造から約40年が経過しており、車両の状態はまさに千差万別です。価格だけで判断せず、車両の本質を見極める目が必要になります。
最大の敵は経年劣化、特に「錆」
前期・後期を問わず、AE86をこれから購入し、長く維持していく上で最大の敵となるのはボディの錆です。当時の防錆技術は現代のレベルには及ばず、特に以下の箇所は入念にチェックする必要があります。
錆の重点チェックポイント
- リアフェンダーのアーチ部分:タイヤが巻き上げた水や泥が溜まりやすい定番箇所です。内側から錆が進行し、塗装が浮いている場合は要注意です。
- トランクフロア(特に3ドア):リアハッチのウェザーストリップが劣化すると雨水が侵入し、スペアタイヤハウスの底に溜まって錆を発生させます。
- ドア下部のサイドシル:ここも水が抜けにくく、ジャッキアップポイント周辺から錆が広がることがあります。
- フロントのストラットタワー周辺:エンジンルーム内ですが、バッテリー液の付着や雨水などで錆びやすい箇所です。
表面的な錆は補修可能ですが、内部のパネルまで進行していると大規模な板金修理が必要になり、場合によっては100万円単位の費用がかかることもあります。購入前に可能であればリフトアップして、フロア下を含めた下回り全体を確認させてもらうのが理想です。
部品供給の現状とGRヘリテージパーツ
旧車を維持する上で避けて通れないのが部品の供給問題です。多くの純正部品が廃番となっていますが、近年明るいニュースもあります。トヨタ自身が、GRヘリテージパーツプロジェクトとして、AE86の一部の重要部品の再生産を開始しました。
2024年現在、ドライブシャフトやデファレンシャルギアなどが供給されており、今後もラインナップの拡充が期待されています。これはAE86を未来へ乗り継いでいきたいオーナーにとって、非常に心強い動きと言えるでしょう。
前期・後期どちらを選ぶべきか?
どちらのモデルにも魅力があるため一概には言えませんが、ご自身のAE86との付き合い方を想像して選ぶのが良いでしょう。
- 後期型がおすすめな人:これからAE86に乗り始め、サーキット走行やカスタマイズも積極的に楽しみたい方。ドライブシャフトの強化をはじめ、各部が熟成・強化されているため、トラブルのリスクを少しでも減らしたい場合に適しています。
- 前期型がおすすめな人:よりオリジナルに近い、80年代の雰囲気を色濃く楽しみたい方や、コレクターズアイテムとしての価値を重視する方。ただし、機関部の弱点はある程度理解し、予防的なメンテナンスを行う覚悟が必要です。
最終的には、内外装の好み、車両のコンディション、そして価格のバランスで決定することになります。個体数が減り、価格が高騰している現在、焦りは禁物です。じっくりと情報を集め、信頼できるAE86専門店で相談しながら探すことが、最高のパートナーを見つけるための成功の鍵です。
前期・後期 比較まとめ表
項目 | 前期型 (1983-1985) | 後期型 (1985-1987) |
---|---|---|
フロントバンパー | 小型でシャープなデザイン | 大型化・コーナリングランプ新設でモダンな印象に |
テールランプ | 凹凸のあるデザイン | スモークがかったフラットな新デザイン(2ドアは互換性なし) |
内装基調色 | 赤茶系、青系など80年代らしいカラー | グレー、黒系で統一されたシックな雰囲気 |
ドライブシャフト | 細い(スプライン径24mm) | 太い(スプライン径25mm)に強化され信頼性向上 |
ECU / ハーネス | 前期専用品 | 後期専用品(制御を最適化し、より扱いやすく) |
ドアミラー | 平滑なグロス仕上げ | シボ加工が施され質感が向上 |
総括:ae86 レビン 前期後期 違いの魅力
AE86レビンの前期型と後期型の違いを深掘りしてきましたが、その進化の歴史は、単なる工業製品のスペックの変化以上の物語を私たちに伝えてくれます。
それは、FF化の大きな潮流の中で、あえてFRレイアウトにこだわり「人馬一体」の楽しさを追求したトヨタの技術者たちが、一台のライトウェイトスポーツカーに注ぎ込んだ情熱と、ユーザーやモータースポーツシーンからの声に応えようとした真摯な熟成の証です。
前期型には、その時代の空気感を色濃く反映したノスタルジックなデザインと、やや荒削りながらもクルマとの対話を存分に楽しめるピュアな操縦感覚という、唯一無二の魅力があります。一方で後期型は、2年間の経験をフィードバックし、信頼性と質感を高め、スポーツカーとしての完成度を極めたモデルとしての魅力を持っています。
どちらのモデルを選ぶかという問いは、AE86というクルマとどのように向き合いたいか、そしてどのようなカーライフを送りたいかという、オーナー自身の価値観や哲学を映し出す鏡のようなものかもしれません。
この記事を通して、あなたが理想の一台を見つけ、安全で豊かなハチロクライフを送るための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
AE86レビン前期・後期の違い 要点まとめ
- AE86は1985年5月のマイナーチェンジを境に前期型と後期型に分かれる
- 簡単な見分け方はフロントバンパーの大きさとコーナリングランプの有無
- 後期型はバンパーが大型化されウインカーも横長デザインに変更された
- 新車当時はレビンがトレノの倍近く売れたが現在は漫画の影響でトレノの人気が高い
- 2ドアクーペは3ドアハッチバックよりボディ剛性が高く約10kg軽量
- 3ドアのテールランプは前期後期で互換性があるが2ドアにはないため注意が必要
- 前期の内装は赤茶系や青系、後期は黒やグレーを基調としたシックなデザイン
- エンジン本体のスペックは同じだが後期はECU制御が最適化され扱いやすさが向上
- 機関部で最も重要な違いはドライブシャフトの太さで信頼性に直結する
- 前期は24mm、後期は25mmへと強化されスポーツ走行での安心感が違う
- これからスポーツ走行も楽しみたいなら各部が熟成された後期型がおすすめ
- 80年代の雰囲気を色濃く楽しみたいなら前期型にしかない魅力がある
- 中古車選びで最も重要なチェックポイントはボディの錆、特に下回りは要確認
- リアフェンダーやトランクフロア、サイドシルは重点的にチェックすべき箇所
- 近年トヨタがGRヘリテージパーツとして一部部品を再生産しており維持環境は改善傾向にある