
Retro Motors Premiumイメージ
1970年代の日本を象徴する高級車、330型セドリック。その中でも「330セドリック シャコタン」スタイルは、なぜ今も多くの旧車ファンを魅了し続けるのでしょうか。
この時代の旧車 セドリック 330は、先代のセドリック 230と330の違いを明確にした、抑揚のあるアメリカンなデザインが最大の特徴です。
当時の日本が抱いた豊かさへの憧憬を体現したこのモデルは、正統な高級車として愛される一方で、そのスタイルゆえにカスタムベースとしても唯一無二の存在となりました。
特に希少価値の高い330 セドリック 2ドアハードトップや、シリーズの最上級グレードとして知られるセドリック330・2800ブロアムは、今も高い人気を誇ります。
兄弟車である330セドリックとグロリアの違いや、厳しい排ガス規制下でのセドリック330の最高速といった基本情報も、この車を理解する上で欠かせない要素です。
この記事では、伝統的な330セドリック シャコタンのやり方の基本から、似合うホイールの選び方、そして現代のカスタム事例までを詳しく掘り下げます。
さらに、330セドリックやグロリアの中古車の購入を検討する上で避けては通れない中古車相場や、購入後に直面する330セドリックの維持費や故障の問題、そしてセドリックの税金といった現実的なポイントまで、網羅的に解説していきます。
この記事で分かること
- 330型がシャコタンカスタムの象徴となった理由
- セドリックとグロリア、230型との具体的な違い
- 現代のカスタム事例と似合うホイールの傾向
- 中古車購入時の注意点と現実的な維持費・故障リスク
330セドリックのシャコタンが映える理由
- 旧車セドリック 330と230との違い
- 330セドリック グロリア 違いと2ドアの魅力
- 最上級グレード、セドリック 330 2800ブロアム
- セドリック 330 最高速と当時の性能
- 330 セドリック シャコタン やり方の基本
旧車セドリック 330と230との違い

Retro Motors Premiumイメージ
330型セドリックが旧車としてこれほどまでに強い個性を放つ最大の理由は、先代230型からの劇的なデザイン変更にあります。
1971年に登場した230型は、同時期のライバル(トヨタ・クラウン)とは対照的に、直線基調でシャープ、かつクリーンなスタイリングを採用しました。
「スピンドルシェイプ」と呼ばれる先進的なデザインでしたが、市場の保守的な高級車ユーザー層からは賛否が分かれました。
その反省を踏まえ、1975年に登場した330型は「輝ける変身」というキャッチコピーの通り、市場が求める「わかりやすい豪華さ」を追求。
当時のアメリカ車に強く影響された、抑揚の強いデコラティブ(装飾的)なデザインへと大きく舵を切りました。
車体側面が中央でくびれ、前後フェンダーが豊かに膨らむ「コークボトルライン」は230型から継承しつつも、330型ではそれをさらに官能的でダイナミックな造形へと進化させています。
この大柄で彫刻的なフォルム、そして威厳に満ちたフロントマスクこそが、シャコタンカスタムのベースとして選ばれ続ける最大の理由です。
車高を下げることで、その長く伸びやかなボディラインが一層際立ちます。
また、330型は高級車としてのステータス性をより明確にするため、豪華な内装や快適装備を格段に充実させ、経済成長と共に豊かさを求めるようになった市場のニーズに完璧に応えました。
言ってしまえば、230型が「先進的で端正なセダン」を目指したのに対し、330型は「誰もが憧れる、華やかで少しワルな高級車」というイメージを確立しました。
この明確なキャラクターの変化が、後のカスタム文化に直結したのです。
項目 | 230型 (1971-1975) | 330型 (1975-1979) |
---|---|---|
デザイン | 直線基調、シャープ、クリーン | 曲面基調、抑揚が強い、デコラティブ |
ボディライン | コークボトルライン(初期型) | コークボトルライン(発展・強調) |
主要モデル | 4ドアセダン、2/4ドアHT、ワゴン | 4ドアセダン、2/4ドアHT、ワゴン/バン |
技術的特徴 | L20/L26エンジン(規制前) | L20/L28エンジン(NAPS排ガス規制対応) |
イメージ | オーソドックス、フォーマル、先進的 | アメリカン、ラグジュアリー、威圧感 |
330セドリックとグロリアの違いと2ドアの魅力

Retro Motors Premiumイメージ
330型には、セドリックの兄弟車として「グロリア」が存在します。この2台は、日本の自動車史において長きにわたり熾烈な販売競争を繰り広げたライバルであり、同時に日産自動車内での販売チャネル(系列店)の違いによる兄弟車でもありました。
- セドリック:主に日産モーター店(ブルーバードなど大衆車も扱う)で販売。
- グロリア:主に日産プリンス店(スカイラインなどスポーティーな車種を扱う)で販売。
セドリックとグロリアの基本的な構造、ボディパネル、エンジン、内装の多くは共通です。
最大の「違い」は、ターゲット層に合わせて微妙に変えられたエクステリア(外観)の意匠にあります。
セドリックとグロリアの主な外観の違い
- フロントグリル:セドリックは縦基調やブロックパターンでフォーマルかつ威厳のある顔つき。グロリアは横基調や十字基調のデザインを採用し、スポーティーかつ精悍な印象を与える傾向がありました。
- テールランプ:リアのデザインも差別化され、それぞれ異なるパターンが採用されました。
- エンブレム:当然ながら、各所のエンブレムやバッジが異なり、これがオーナーのアイデンティティにもなりました。
そして、330型のスタイリングを語る上で絶対に欠かせないのが「2ドアハードトップ」の存在です。
Bピラー(前後のドア間の柱)を持たないピラーレス構造は4ドアハードトップと共通ですが、2ドアクーペ専用の流麗なルーフラインと大きなドア、そしてオペラウィンドウ(Cピラー部の小窓)風のデザイン処理は、4ドアモデルとは比較にならないほどのスペシャルティ感とパーソナルな贅沢さを演出します。
その生産台数の少なさから、現在では極めて希少価値が高く、中古車市場では常に探し求められるコレクターズアイテムとして高値で取引されています。
-
-
セドリックとグロリアの違いを徹底解説!【兄弟車の歴史】
日産の高級セダンとして一時代を築いたセドリックとグロリア。 両車はよく似た姿をしていますが、「セドリックとグロリアは同じなのか、それとも違うのか」という疑問は、多くのクルマ好きが一度は抱くものでしょう ...
続きを見る
最上級グレード、セドリック330・2800ブロアム
330型セドリックは、日産の高級車戦略において非常に重要な転換点となったモデルでした。なぜなら、その後長きにわたり日産の最上級グレードを象徴する名称となる「ブロアム(Brougham)」が、この330型で初めて設定されたからです。
「ブロアム」とは、元々「御者席が屋根の外にある、豪華な四輪馬車」を指す言葉です。ここから転じて、後席の乗員を最優先するショーファードリブン(運転手付き)にも耐えうる、プレステージ・サルーンの証として命名されました。
セドリック 330・2800ブロアムの圧倒的ステータス
- エンジン:当時の「3ナンバー(普通乗用車)」枠となる、シリーズ最強のL28E型エンジン(2.8L 電子制御燃料噴射)を搭載。自動車税が高額になる代わりに、2.0Lモデルとは比較にならない余裕のパワーとトルクを提供しました。
- 装備:シート生地や内装トリムが標準グレードより格段に豪華になり、パワーウィンドウや集中ドアロック、カラードウレタンバンパーなどの快適・高級装備が標準で備わりました。
- ステータス:このL28Eエンジンの余裕ある走りと豪華な装備は、永遠のライバルであるトヨタ・クラウンの最上級グレード「ロイヤルサルーン」に対抗するためのものであり、オーナーに絶対的な満足感と優越感を提供しました。
この「ブロアム」の登場により、セドリックは単なる国産上級車から、国際基準のラグジュアリーセダンへとその地位を明確に高めたのです。
セドリック330の最高速と当時の性能
330型セドリックの豪華絢爛な見た目とは裏腹に、その性能は「時代の重い枷(かせ)」にはめられていました。
1975年という登場年は、通称「日本版マスキー法」と呼ばれる、当時の世界で最も厳しい「昭和50年排出ガス規制」と真正面からぶつかった時期です。
日産はこの国家的難題に対し、「NAPS(Nissan Anti-Pollution System)」と呼ばれる排出ガス浄化システム(参照:日産「NAPS」)で対応しました。
しかし、黎明期のこのシステムは、EGR(排気ガス再循環装置)や酸化触媒といったデバイスの追加により、エンジン本来のパワーとレスポンスを大きく削ぐ結果となります。
NAPSによる性能への影響(黎明期の苦闘)
初期のNAPSは、エンジンの運転状況(加速中、減速中など)を精密に制御する電子技術が未熟でした。そのため、機械的な負圧制御に頼るEGRが、加速したい場面でも作動してしまうなど、アクセルレスポンスの著しい悪化や息つき(スムーズに加速しない現象)を招きがちでした。「牙を抜かれた」と揶揄されたのは、このためです。
当時の主力エンジンであったL20E型(2.0L)が130ps、最上級のL28E型(2.8L)が140psというスペックでした。車両重量が約1.4トンから1.5トンあったことを考えると、現代の同クラスのセダンのような俊足ではありません。
「最高速」についても、当時の自動車専門誌のテストなどでは170km/h前後という記録が残っていますが、数値以上に、規制対応によるドライバビリティの低下がドライバーにストレスを感じさせる場面も多かったようです。
しかし、この不遇な時代があったからこそ、ベースとなったL型エンジン自体の耐久性(頑健な鋳鉄ブロック)は非常に高く評価されました。
そして、この「見た目の威圧感」と「規制によって失われた性能」という大きなギャップこそが、後に若者たちがパワーと刺激を求め、NAPSを取り払う「デスモッグ」やキャブレター換装といった過激な改造(チューニング)に情熱を注ぐ最大の原動力となったのです。
330セドリックのシャコタン!やり方の基本

Retro Motors Premiumイメージ
330型セドリックが、数ある旧車の中で「シャコタン」の象徴的なベース車として君臨し続けるのには、いくつかの明確な理由が奇跡的に重なっています。
- 圧巻のデザイン:前述の通り、アメリカンで大柄なボディとピラーレスハードトップが持つ伸びやかなラインは、車高を下げることでその「低さ」と「長さ」が極端に強調され、他の車種では得られない圧倒的な存在感を放ちました。
- 強烈なイメージ:『西部警察』や『大都会』といった昭和を代表する刑事ドラマで、犯人車やスタント用のパトカーとして頻繁に登場。派手に横転し、破壊されるシーンは、この車に「タフ」「ワル」「アウトロー」という強烈なパブリックイメージを植え付けました。
- 手の届く「元・高級車」:1980年代に入ると、新車時には高嶺の花だった330型も中古車市場で価格が大きく下落。若者でもアルバイト代を貯めれば「元・高級車」のオーナーになれるという優越感が、彼らを惹きつけました。
- 圧倒的な改造の容易さ:そして、これが決定的でした。技術的な知識が少ない若者でもカスタムしやすかったのです。
技術的に最も重要なポイントは、他のセダンが追従できなかった、リアサスペンションの古い構造にあります。
シャコタンカスタムの核心:リーフリジッド
330型セドリック(乗用モデル)のリアサスペンションは、トラックなどにも使われる「リーフスプリング(板バネ)式」が採用されていました。これは構造が単純で耐久性が高い一方、現代の独立懸架式(コイルスプリング)に比べて乗り心地や路面追従性では不利な方式です。
しかし、この構造がシャコタンカスタムには最適でした。アクスル(車軸)とリーフスプリングの間に「ロワリングブロック」と呼ばれる安価な金属製のブロックを挟み込むだけで、誰でも簡単かつ安価に、そして確実(数センチ単位)に車高を下げることができたのです。
一方で、フロントは独立懸架のダブルウィッシュボーン式だったため、スプリングをノコギリなどで切断する(通称:カットサス)か、後年のモデルから車高調整式サスペンション(車高調)を流用・加工して取り付けるといった手法が取られました。
「カットサス」の危険性
スプリングを切断して車高を下げる手法は安価ですが、スプリング本来の性能を著しく損ない、乗り心地が極端に悪化するだけでなく、スプリングがアームから外れる(遊ぶ)可能性があり非常に危険です。当然ながら、現在の保安基準には適合しません。
いずれにせよ、リアサスペンションの手軽な改造方法が確立されていたことが、330型をシャコタン文化の寵児へと押し上げた最大の要因であることは間違いありません。
330セドリック シャコタンの維持と購入術
- 330 セドリック 似合うホイールの選び方
- 330 セドリック カスタム 事例を紹介
- セドリック グロリア 330 中古車と相場
- 330 セドリック 維持費 故障と税金を解説
- まとめ:330 セドリック シャコタンの魅力
330セドリックに似合うホイールの選び方

Retro Motors Premiumイメージ
330セドリックのシャコタンスタイルを完成させる上で、ホイール選びは最も重要な「顔」となる要素です。
その抑揚のある角張ったボディラインには、現代の洗練されたデザインよりも、当時の無骨で力強いデザインを汲んだ「深リム」のホイールが定番とされています。
具体的には、以下のような「当時モノ」またはその復刻デザインが今も昔も絶大な人気を誇ります。
- SSR(スピードスター):マークI(お皿型)、マークII(4本スポーク)、マークIII(メッシュ)など、スポークやメッシュデザインの深リムは王道中の王道です。当時のレースシーンでの活躍も人気を後押ししました。
- ハヤシレーシング:ハヤシストリート(通称バナナスポーク)も、クラシカルなスポーツ感を演出するのに最適です。
- ワタナベ:RSワタナベの8スポークデザインは、車種を選ばない普遍的な定番ですが、330のような角張ったボディにもよく似合います。
ホイールを選ぶ際は、デザインだけでなくPCD(ナット穴の間の距離)やオフセット(インセット)に細心の注意が必要です。330型のPCDは全車114.3mmですが、穴数はグレードによって異なりました。
- 4穴:L20系エンジン搭載の5ナンバーモデル(2000ccクラス)
- 5穴:L28系エンジン搭載の3ナンバーモデル(2800ccクラス)
シャコタンにし、フェンダーとタイヤの面をギリギリまで合わせる「ツライチ」を目指す場合、オフセットの選択が非常にシビアになります。数ミリの違いでフェンダーに干渉するため、現車合わせでのマッチングが基本となります。
ホイール選びの豆知識:「ヒッパリタイヤ」
当時のカスタムでは、あえて細いリム幅のホイールに規定より幅広のタイヤを履かせ、タイヤの側面(サイドウォール)を斜めに引っ張る「ヒッパリタイヤ」という手法が多用されました。
これは、フェンダーとの干渉を避けつつ、リムの深さを強調するためのテクニックでした。
ただし、極端なヒッパリタイヤはタイヤがホイールから外れるビード落ちのリスクを高めるほか、国土交通省が定める保安基準(タイヤの突出禁止など)に抵触する可能性があるため、現代で再現する際は十分な知識と注意が必要です。
330 セドリック カスタム 事例を紹介

Retro Motors Premiumイメージ
330セドリックのカスタムは、シャコタンとホイール交換だけにとどまりません。そのベース車両としての素性の良さと、オーナーの個性を反映しやすいキャンバスとしての魅力から、多様なスタイルが存在します。
エンジン・排気系カスタム
最も代表的かつ根強い人気を誇るのが、排ガス規制(NAPS)の足枷を取り払う「デスモッグ」と呼ばれるカスタムです。エンジンルームに張り巡らされた複雑怪奇なバキュームホースやEGR装置を撤去し、吸排気系を最適化します。
具体的には、純正のEGI(電子制御燃料噴射)やキャブレターを外し、ソレックスやウェーバーといった高性能キャブレターに換装。
同時に、触媒を取り払った「ストレートマフラー(直管)」や「タコ足(エキゾーストマニホールド)」を装着することで、L型エンジン本来の鋭い吹け上がりと、「クォーン」という独特の吸気音、そして迫力ある排気サウンドを取り戻します。これは「失われたパワーを取り戻す」という、一種の儀式でもありました。
エクステリア(外装)カスタム
シャコタンをさらに過激に演出する「街道レーサー」スタイルも人気です。「チンスポイラー」(フロント下部のエアロ)や「板ッパネ」(リアのウイング)の装着は基本中の基本。
さらに、レース用の「ワークスオーバーフェンダー」をリベット留めし、極太のタイヤを収めるスタイルや、フロントにオイルクーラーを露出させて設置するスタイルも、当時の過激なカスタムを象徴しています。
刑事ドラマの悪役が乗っていたような、黒塗りでフルスモーク、ローダウンのみの「ワル」な仕様を現代に再現するオーナーさんも多いですね。それだけ、330型が持つ「キャラクター性」が強いということです。
インテリア(内装)カスタム
内装も個性の見せ所です。経年劣化したダッシュボードの割れなどをリペア(修復)するついでに、シートや内張りを「チンチラ」や「金華山」といった、豪華な柄の生地で張り替えるカスタムも人気です。
これは当時の豪華サロンバスやデコトラ文化とも通底する、日本独自のきらびやかな美意識の現れと言えます。また、ステアリングを小径のウッドステアリングや、定番の「ナルディクラシック」などに交換するのも定番です。
セドリックとグロリア!330型の中古車と相場
製造から約半世紀(50年近く)が経過した現在、330型セドリック(グロリア含む)の中古車市場は、典型的なクラシックカーの様相を呈しています。
流通台数は年々減少しており、価格は「ASK(応談)」となっている個体も少なくありません。価格が公表されている車両も、個体の状態によって極端に変動するのが特徴です。
中古車情報サイトや旧車専門店のデータを分析すると、以下のような大まかな傾向が見られます。
330型 中古車相場の目安(2025年現在)
- レストアベース(不動車・サビ多):100万円以下で見つかることもありますが、書類の有無(車検証)が問題になることも。ここから公道復帰させるには、車両価格の数倍の修理費用を覚悟する必要があります。
- 走行可能(現状販売):250万円~350万円が中心的な価格帯です。ただし、これはあくまで「走り出すための入り口」の価格であり、購入後に多くの予防メンテナンスや修理が必要になる前提です。
- 極上車(フルノーマル・レストア済):内外装が美しく保たれ、機関も整備済みの個体は、400万円~600万円、あるいはそれ以上のプライスタグが付くことも珍しくありません。
人気グレードの傾向としては、やはり2ドアハードトップが最も希少で価格も高騰しています。次いでピラーレスの4ドアハードトップ、特に最上級グレードの「ブロアム」やEGI搭載の「SGL-E」が高値で取引される傾向にあります。
近年では、シャコタンやカスタムされた車両だけでなく、当時の姿を色濃く残すフルノーマル車両の価値が国内外で著しく見直されています。
購入時は価格だけでなく、後述するウィークポイントがどれだけ対策されているか、そして整備記録が残っているかを重視すべきです。
330セドリックの維持費と故障と税金を解説

Retro Motors Premiumイメージ
330型セドリックのオーナーになるということは、その輝きを維持するための「闘い」を始めることでもあります。憧れだけで購入すると、現実とのギャップに苦しむことになります。
購入前に必ず把握しておくべき、この年式固有のウィークポイント(故障しやすい箇所)と、現実的な維持費について解説します。
最大の敵:固有のウィークポイント(持病)
購入前に必ず確認すべき4大弱点
- 腐食(錆):この時代の日本車最大の敵です。防錆技術が未熟なため、湿気の多い日本では錆との戦いは避けられません。特にフロアパネル(特に後部座席下)、フレーム、サイドシル(ドア下の部分)、トランクフロア、窓枠周りは水が溜まりやすく、内側から腐食しているケースが多いです。リフトアップしての下回り確認は絶対必須です。
- 内装部品の劣化:ダッシュボードの大きな亀裂は、330型の持病・宿命とも言えるウィークポイントです。長年の紫外線で樹脂が硬化・脆化しており、割れていない個体を探すほうが困難です。新品部品の入手は絶望的であり、リペアには専門技術と高額な費用がかかります。
- EGI(燃料噴射)の不調:L20EやL28Eに採用された初期の電子制御インジェクターやエアフロセンサーは、現代のシステムに比べて信頼性が低く、経年劣化で不調をきたしやすい部品です。これらも新品の入手はほぼ不可能で、不調に陥ると専門業者での洗浄・オーバーホールや、希少な中古部品を探すしかありません。
- ピラーレス故の不具合:デザイン上の魅力であるピラーレスハードトップは、ボディ剛性の低さから歪みが出やすいという構造的弱点を抱えています。ドア周りのゴムシール(ウェザーストリップ)が劣化・硬化すると、雨漏りや風切り音の発生は避けられません。このゴム部品も廃盤となっており、維持の大きな壁となります。
現実的な維持費(税金含む)
旧車の維持費は、大きく「①税金・保険」と「②メンテナンス・修理費用」に分けられます。
1. 税金・保険
自動車税と自動車重量税は、環境負荷の観点から、新規登録から13年(ガソリン車)および18年(重量税)を経過すると「重課措置」の対象となり、税額が大幅に上がります。330型は全てのモデルがこれに該当します。
この重課措置については、国土交通省の「自動車税のグリーン化特例」の概要にも記載されており、自動車税は約15%、重量税は約39%(18年経過)も標準税率より高くなります。
項目 | 費用の目安(年間) | 備考 |
---|---|---|
自動車税(重課) | 約58,600円〜 | 2.5L超3.0L以下、13年超重課(約15%増)が適用された場合の目安です。 |
自動車重量税(重課) | 約25,200円 | 車両重量1.5t以下、18年超重課が適用された場合の2年分(50,400円)を1年あたりで換算。 |
自賠責保険 | 約10,000円 | 24ヶ月契約を1年あたりで換算。 |
任意保険 | 変動大 | 年齢や等級によりますが、車両保険は加入が難しい(または非常に高額)場合が多いです。 |
※上記はあくまで目安です。正確な金額は自治体や保険会社にご確認ください。
2. メンテナンス・修理費用
これが維持費の大部分を占め、「聖域」として確保しておくべき費用です。
旧車用のオイル(カム摩耗を防ぐZDDP添加剤入り鉱物油など)の選定や、現代のガソリン(バイオエタノール配合)に対応できる耐エタノール性の燃料ホースへの全交換は、車両火災を防ぐためにも必須の予防メンテナンスです。
加えて、電気系統(ハーネス、ヒューズボックス)の劣化によるトラブル、ブレーキやサスペンションのゴム部品(ブッシュ類)の交換など、いつどこが故障してもおかしくありません。年間数十万円単位のメンテナンス費用を確保しておく覚悟が必要です。
まとめ:330セドリックのシャコタンの魅力
330型セドリックがシャコタンカスタムのベースとして時代を超えて愛され続ける魅力を、最後に要点としてまとめます。
- 330型は1975年に登場した4代目セドリック
- 先代230型の直線基調から曲面的なアメリカンデザインへ変貌
- シャコタンが似合う抑揚の強いコークボトルラインが特徴
- 兄弟車グロリアとは主にグリルやテールランプの意匠が異なる
- 2ドアハードトップは希少価値が非常に高い人気モデル
- 「ブロアム」グレードが初設定された記念碑的モデルでもある
- 最上級の2800ブロアムはL28Eエンジンを搭載した
- 排ガス規制(NAPS)の影響でエンジン性能は抑制されていた
- 刑事ドラマでの活躍が「ワル」なイメージを定着させた
- リアがリーフスプリングのためシャコタンの改造が容易だった
- ロワリングブロックの使用が当時の定番カスタム手法
- 似合うホイールはSSRマーク系などの「深リム」デザイン
- NAPSを撤去する「デスモッグ」やキャブ化も定番カスタム
- 中古車相場は250万~350万円が中心だが状態次第で高騰
- 最大の弱点は錆、ダッシュボード割れ、EGI不調、雨漏り
- 自動車税・重量税は重課措置の対象となる
- 維持には旧車への深い知識と継続的なメンテナンス費用が必要