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シビック乗ってる人イメージは2つ?タイプRと標準像

街中を走るホンダ シビック e:HEVとサーキットを走行するシビック タイプR。二つの異なるシビックのイメージを対比。

Retro Motors Premiumイメージ

こんにちは。レトロモーターズプレミアム 運営者の「旧車ブロガーD」です。

シビックについて調べると、「シビック 乗ってる人 イメージ」という言葉が気になりますよね。かつては「走り屋」のイメージが強かったシビックですが、現行モデルを見て「最近のシビックは大人っぽい」と感じる人もいれば、「タイプRはやっぱりマニア向け?」と思う人もいるでしょう。e:HEVモデルの登場でターゲット層がZ世代にも広がっている一方で、「かっこいい」と「ダサい」という両極端な評価も存在します。特に「小回りが効かない」といった実用面での声もあり、実際のドライバー像がどうなっているのか、掴みづらいのが正直なところかなと思います。

この記事では、現代のシビックに乗る人のイメージが、実は大きく2つに分かれているという視点で、その背景や理由を掘り下げていきます。単なるデザインの話ではなく、メーカーの戦略や、クルマが抱える実用上のジレンマが、どうドライバー像に影響しているのかを見ていきましょう。

 

  • シビックのイメージが「2つ」に分かれた理由
  • 標準モデル(e:HEV)が狙う新しいドライバー像
  • タイプRが惹きつける熱狂的なマニア像
  • 「ダサい」と言われるイメージの本当の理由

 

分岐するシビック 乗ってる人 イメージ:標準編

都市の高速道路を爽やかに走行するホンダ シビック e:HEV。車内にはリラックスした表情の日本人カップル。

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まずは、街中でよく見かけるようになった標準モデルのシビック(ハッチバックやe:HEV)から見ていきましょう。このモデルの登場で、シビックのイメージは昔とガラリと変わったと感じています。これは偶然ではなく、メーカーであるホンダが、かなり意識的に「新しいイメージ」を構築しようとしているのが伝わってきますね。

 

メーカーが狙うターゲット層

まず押さえておきたいのは、11代目となる現行シビックのメインターゲット層が、私たちのような旧車好きとは少し違うということです。彼らが何を求め、ホンダが何を提供しようとしているのかが、新しいシビック像の鍵を握っています。

爽快シビックというコンセプト

開発コンセプトは「爽快シビック」。これは、従来の「運転が楽しいクルマ(Fun-to-Drive)」という性能ベースの訴求から、「乗っていて心地よい空間」という感覚的な価値へのシフトを示しています。

インテリアは「ノイズレスな造形」とされ、心地よい移動空間を目指しているそうです。これは、スペック表の数値(馬力やトルク)で競う時代から、乗る人が「どう感じるか」を重視する時代への変化に対応したものかなと思います。性能よりもまず「乗っていて気持ちいいか」、その「質」が問われているんですね。

Z世代という明確なターゲット

そして、具体的なターゲットとして設定されたのが、1990年代半ばから2000年代前半生まれの、いわゆる「Z世代」だと言われています。彼らは生まれながらにインターネット環境で育ち、SNSに親しむ中で自身の社会的責任や他者からの評価に敏感であり、先進デバイスも使いこなす層、と定義されています。

この時点で、かつてのシビックが持っていた(あるいは一部で持たれていた)「反抗的」な若者像とは正反対です。社会的意識が高く(=環境性能など)、デジタル社会に統合された(=コネクテッド機能など)層を狙っているわけですね。クルマ選びが「自分がいかにセンスが良く、社会に配慮できるか」を示す自己表現の一つになっている、とも言えそうです。

 

Z世代が求める大人っぽい姿

ホンダ シビックのモダンなコックピットで、ナビゲーションシステムを操作するビジネススーツ姿の日本人男性。

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Z世代をターゲットに据えると、求められるクルマの姿も当然変わってきます。彼らの価値観は、上の世代とは少し違うようです。

「良いとこ取り」の価値観

彼らの価値観は「特別感があり、親しみやすく、心地よいもの」を求める傾向にある、とメーカーは分析したようです。これはつまり、「分かりやすい高級車ブランド(例えばドイツ御三家など)は気恥ずかしいし、見栄っ張りに見える。でも、質の高い、スマートなモノを選びたい」という、非常に鑑識眼が問われる感覚かなと思います。

トヨタ車のような主流派の「親しみやすさ」と、ドイツ車のようなプレミアムな「特別感」。この両立は、メーカーにとって最も難しい注文の一つですよね。

デザイン言語への反映

この二重の価値観は、11代目シビックの設計に直結しています。

  • 親しみやすさ:水平基調のダッシュボードデザインや、広い水平視野角による開放的な空間。そして、直感的に操作できる分かりやすいインターフェース。
  • 特別感:クーペのように流麗なシルエット、スリムなLEDヘッドライト。そして、エアコンの操作ダイヤルやスイッチ類の「カチッ」という「感性に響く」ような触感。

これにより形成されるドライバーイメージは、「見栄っ張りではないが、高い鑑識眼を持つ人物」。分かりやすいバッジ(エンブレム)の力に頼るのではなく、「スマートで控えめな品質」を自ら見抜いて選択する大人っぽい姿こそ、新しいシビックが演出しようとしているドライバーイメージの核心ですね。

 

e:HEVと洗練されたかっこいい像

新しいシビックの「大人っぽさ」と「スマートさ」を最も象徴しているのが、e:HEV(ハイブリッドモデル)の存在です。

前述の「社会的責任への意識が高い」というターゲット層の分析は、まさにこのe:HEVと直結しています。ガソリンを撒き散らして走るのではなく、効率の良いハイブリッドを選ぶという行為そのものが、「環境意識が高く、同時におしゃれである」という洗練されたイメージに直結しますからね。

シームレスで上品な走り

ホンダのe:HEVは、基本的にはモーターで走行し、エンジンは発電に徹することが多いシステムです(高速巡航時などはエンジン直結)。この仕組みが、非常にシームレスで上品な走りをもたらします。電気自動車に近い、滑らかで静かな加速感ですね。

この「静かでスマート」なかっこよさは、従来のVTECサウンド(高回転域の「カーン!」という甲高い音)に胸を熱くした世代(私を含め)にとっては、正直「物足りない」「刺激がない」と感じる部分もあるかもしれません。

「かっこよさ」の二極化

まさにここで、シビックの「かっこよさ」が二極化していると言えます。新しい「かっこよさ」(静か・上品・洗練・環境配慮)が登場したことで、従来のファンが求める「かっこよさ」(刺激的なエンジン音・官能的な速さ・メカニカルな魅力)との間で、シビックのイメージは明確に分かれ始めているんです。

従来の「走り屋」イメージの払拭

こうした新しいイメージ戦略は、裏を返せば、かつてのシビックにまとわりついていた「走り屋」や「やんちゃ」といったイメージを積極的に払拭(デトックス)しようとする試みでもあります。

私のような旧車好きにとって、シビックといえば、やはり「タイプR」の存在が強烈です。特にEK9型シビックタイプRは、その軽量ボディと高回転型VTECエンジンで、まさに「走る」ためのクルマでした。

さらに言えば、大阪の「環状族」のような、少しアンダーグラウンドなカルチャーの象徴でもありましたよね。(大阪環状族の独特な文化については、以前の記事でも少し触れました)

あれはあれで強烈な魅力とカルチャーがありましたが、メーカーとしては、より広い層に受け入れられる「成熟」や「趣味の良さ」という、クリーンなイメージを打ち出したいわけです。ブランドが生き残り、新しい顧客を獲得するためには、この「デトックス」は不可欠な戦略だったとも言えます。

新型シビックが売ろうとしているのは、性能そのものよりも「洗練されたライフスタイルを送る自分」という、新しいペルソナなのかもしれません。

6MT設定が持つ戦略的役割

ここで非常に興味深いのが、e:HEVで洗練されたイメージを牽引する一方で、標準モデル(ガソリン車)にも6速マニュアルトランスミッション(MT)が設定されている点です。

CVT(やオートマ)が主流のこの時代に、あえてMTを残している。これは、単なるファンサービスではなく、ホンダからの「完全に快適性重視になったわけじゃないですよ」という、古くからのファンや自動車メディアに向けた強いメッセージだと私は解釈しています。

新旧ファンへの「橋渡し」

もしこのMT設定がなかったら、ホンダは「ただの快適でスマートなクルマを作るメーカー」になってしまい、ブランドの核である「Fun-to-Drive(運転の楽しさ)」のイメージが失われる危険性がありました。

この6MTの存在が、新しい「洗練されたシビック」と、ホンダの伝統である「走る喜び」を繋ぎとめる、非常に戦略的な「橋渡し」の役割を果たしているんですね。e:HEVでZ世代という新しい顧客層を取り込みつつ、MT設定で「ホンダの魂は健在だ」とアピールする。この絶妙なバランス感覚は、さすがホンダだなと思います。

もう一つのシビック 乗ってる人 イメージ:R編

ホンダ シビック タイプRの運転席から見た視点。レーシンググローブを装着したドライバーがステアリングを握り、サーキットを走行中。

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さて、標準モデルが「洗練」や「快適性」へと大きく舵を切った一方で、シビックにはもう一つの、あまりにも強烈な顔があります。それが「タイプR」です。ここからは、標準モデルとはまったく異なる、「究極」を求めるもう一つの「シビック 乗ってる人 イメージ」について見ていきましょう。

タイプRに乗るマニアの人物像

FL5型と呼ばれる現行シビック タイプR。このクルマのコンセプトは、標準モデルの「爽快シビック」とは真逆とも言える「Ultimate Pure Sports Performance(究極のピュアスポーツ性能)」です。

これはもう、ターゲットが明確ですよね。カジュアルな購買層ではなく、パフォーマンスに対して深い知識を持つ、熱狂的なマニア層です。

「ニュルFF最速」のファミリーカーという矛盾

ただ、面白いのは、これが2シーターのピュアスポーツカーではなく、あくまで5ドアハッチバックであるという点。ここから浮かび上がるのは、「家族の送迎や日常の買い物といった実用性も(理論上は)必要。でも、パフォーマンスにおける究極を一切妥協できない」という、ある種の「責任ある過激主義者」とも言える人物像です。

最高出力243kW(330PS)を発生する2.0L VTEC TURBOエンジン、265mm幅の専用タイヤ、進化したレブマッチシステムなど、公道を走るのがためらわれるほどのハードウェアを搭載。そして「ニュルブルクリンクFF最速」の称号。これは「FF(前輪駆動)」という実用車ベースのパッケージで、どこまで速く走れるかというホンダの技術的挑戦の象徴です。

この「最速のファミリーカー」を選ぶという、極めて逆説的な選択を自ら進んで行う層のイメージですね。

データで走るプロシューマー

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現代のタイプR乗りを象徴しているのが、専用データロガーアプリ「Honda LogR」の存在です。

これにより、タイプR乗りのイメージは、かつての「スピード狂」や「峠の走り屋」から、「データ駆動型のプロシューマー(生産消費者の造語)」へと大きく進化しました。

「Honda LogR」の具体的な機能

このアプリは、単にサーキットのラップタイムを計るだけではありません。

  • パフォーマンスモニター機能:Gフォースやヨーレート、タイヤの摩擦円(タイヤがどれだけグリップを使っているか)までリアルタイムで表示。
  • スコアリング機能:サーキット走行後、自分の運転操作を採点し、「急ブレーキが多かった」「ステアリング操作が雑だった」など、上達のためのフィードバックをくれる。
  • データ共有機能:走行データと同期した車載動画を作成し、SNSなどで共有できる。

まさに、テレビゲーム『グランツーリスモ』で育った世代が、現実の運転にデジタル解析を持ち込んだ姿と言えます。

ゲーム世代の「習熟」

彼らのイメージは、マシンを単に「使う(乗る)」のではなく、技術的な適応力を駆使して「習熟」し、そのデータ付きの成果を「共有」するという、極めて現代的なものです。運転をスポーツやeスポーツのように捉え、分析・改善の対象としている。これはもう、昔の「走り屋」とはまったく異なる人種ですね。

「ダサい」イメージの核心とは

さて、ここまで「かっこいい」側面を見てきましたが、検索すると出てくる「シビック ダサい」というネガティブなイメージがどこから来るのかも気になりますよね。

デザインについては、先代(FK型)の過激なデザインに比べ、現行型は「クリーンになった」「大人っぽくなった」と好意的な意見が多いように感じます。では、何が「ダサい」と言われる原因なのか。

いろいろなレビューや意見を見てみると、このネガティブなイメージの核心は、意外にもその洗練されたデザイン(見た目)ではなく、「実用性」にあることが見えてきました。

具体的には、「小回りが効かない」という点です。これが、デザインが好みであっても、日常使いにおいて想像以上のストレスになっている可能性があるんですね。

弱点は小回りが効かない点

駐車場のホンダ シビック。最小回転半径5.7mの図解が重ねられ、小回りの効きにくさを視覚的に表現。

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現行の11代目シビック、その最小回転半径は5.7mです。(出典:ホンダ公式サイト「シビック 主要諸元表」

この「5.7m」という数値、ピンと来ないかもしれませんが、同クラスの競合車種と比較すると、その差は歴然です。

車種 最小回転半径(目安)
ホンダ シビック 5.7m
トヨタ カローラ(ハッチバック) 5.1m 〜 5.3m
マツダ MAZDA3 5.3m
スバル インプレッサ 5.3m

※数値はグレードやタイヤサイズにより異なる場合があります。あくまで目安として比較してください。

道幅が狭く、駐車スペースも限られる日本国内において、この40cm〜60cmの差は非常に大きいですよね。スーパーの駐車場で、隣の軽自動車やカローラが1回で出られるところを、シビックは2〜3回切り返す必要がある、といった事態が日常的に発生し得ます。

この「切り返しにもたつく姿」は、確かに「スマート」や「かっこいい」とは言えません。

「ダサい」=「不器用」なイメージ

この実用性の問題から生まれる「ダサい」イメージとは、「不器用」なドライバーの姿です。ドライバーのテクニックではなく、クルマの選択そのものが、日本の道路環境という最も基本的な部分でミスマッチを起こしている、というイメージにつながってしまうのかもしれません。

最小回転半径5.7mの現実

この「5.7m」という数値は、シビックのブランドイメージにおける最大の矛盾点だと私は感じています。

コンセプトと現実のギャップ

ホンダのクルマづくりの基本は、創業以来「人中心(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)」です。そして新型シビックのコンセプトにも「親しみやすさ」が掲げられています。

それにもかかわらず、現実はクラスワーストとも言える最小回転半径です。これは、恐らく流麗なデザイン(低いボンネットや長いホイールベース)や走行安定性(広いトレッド)を優先した結果だとは思いますが、「人中心」を謳うクルマが、日本の道路環境という最も「人」に近い部分で使いにくさを露呈している、という皮肉な状況を生んでいます。

ドライバーイメージへの影響

この矛盾が示すドライバーイメージとは、「実用性」というシビックの伝統的な美徳(機敏さ、コンパクトさ)よりも、新型の流麗な「美観」や「特別感」を優先した人物、というものです。メーカーが打ち出す洗練されたイメージを選んだ結果、日常的な不便という代償を払っている、とも見えてしまいますね。

ちなみに、この問題はタイプRも同様で、「小回りの効かなさ」に加えて「1,890mmという車幅の大きさ」が、日本の道で乗る上での大きな懸念点として挙げられています。この車幅は、日本の多くの機械式駐車場(全幅1,850mm制限が多い)に入らないことを意味します。タイプR乗りは、パフォーマンスと引き換えに、こうした日常のペナルティを「承知の上で受け入れている」のです。

 

総括:シビック 乗ってる人 イメージ

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ここまで見てきたように、「シビック 乗ってる人 イメージ」は、もはや単一ではありません。メーカーの意図的な戦略によって、明確に2つに分岐しています。

  1. 標準モデル(e:HEV / ハッチバック)
    「走り屋」の過去をデトックスし、「洗練」や「感覚的な上質さ」を求めるZ世代や大人層。「スマートで環境意識も高い」という現代的なかっこよさを体現するイメージ
  2. シビック タイプR(FL5)
    「速さ」と「データ」を追求し、日常性と究極のパフォーマンスの両立(という妥協)をあえて選ぶ、熱狂的な「マニア」であり「データ駆動型のプロシューマー」

そして、これら2つの全く異なるイメージに共通してつきまとうのが、「小回りが効かない(最小回転半径5.7m)」という実用性のジレンマです。

あなたが街でシビックを見かけた時、あるいはこれから選ぼうとする時、思い浮かべる「シビックのイメージ」は、このどちらの姿でしょうか。そして、その実用性のジレンマをどう捉えるか。クルマ選びは本当に奥が深いですね。

  • この記事を書いた人

旧車ブロガーD

はじめまして! 80~90年代の名車たちへの「憧れ」と、愛車のメンテナンスで得た「機械への敬意」を胸に、誠実な情報をお届けします。

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