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トヨタ・クラウンは、単なる高級車という言葉だけでは語り尽くせない、日本の自動車史における特別な存在です。特に「いつかはクラウン」という言葉が生まれた時代背景を知る世代にとって、その名は成功の象徴でした。中古車市場でも人気のクラウンですが、グレードについて調べていると「スーパーサルーン」と「ロイヤルサルーン」という名前を目にすることが多いでしょう。この記事では、クラウン スーパーサルーンとロイヤルサルーンの違いについて、歴史や具体的なスペックを交えながら詳しく解説します。
クラウンのグレードをランク順に見ていくと、時代によって変遷はありますが、スーパーデラックスの歴史的な位置づけや、スーパーサルーンエクストラとは何か、といった細かな疑問も湧いてきます。また、最上級グレードであるロイヤルサルーンには、ロイヤルサルーンとロイヤルサルーンGの違いという、さらに上の階級が存在しました。この記事を読めば、ロイヤルサルーンの名前の由来から、人気の130クラウンのグレードの違い、そして頂点に君臨した130クラウンV8の馬力に至るまで、深く理解できます。
さらに、クラウンのグレードによる外装の見分け方、豪華装備が満載のロイヤルサルーンの内装、そして質実剛健なスーパーサルーンの快適装備の違いにも焦点を当てます。クラウンのエンジンがグレード別にどう違うのか、そしてクラウンの当時の価格がグレード別でどれほど異なっていたのかを知ることで、両グレードの「格」の違いがより明確になるはずです。
この記事でわかること
- スーパーサルーンとロイヤルサルーンの歴史的背景と位置づけ
- 外装や内装、エンジンなど具体的なスペックの違い
- 130クラウンなど特定モデルのグレードによる詳細な差異
- 当時の価格や現代における中古車選びのポイント
歴史で紐解くクラウン スーパーサルーンとロイヤルサルーンの違い
- 「いつかはクラウン」の時代背景
- クラウンのグレードをランク順に解説
- ロイヤルサルーンという名前の由来
- スーパーデラックスの歴史的な位置づけ
- スーパーサルーンエクストラとは何か
- ロイヤルサルーンとロイヤルサルーンGの違い
「いつかはクラウン」の時代背景
「いつかはクラウン」というキャッチコピーは、単なる広告文句を超えて社会現象にまでなった、日本の自動車史において最も有名なものの一つです。この言葉が鮮烈なインパクトをもって世に広まったのは、1983年に登場した7代目クラウン(S120系)の時代でした。当時の日本は、後にバブル経済と呼ばれる空前の好景気へと突き進む、まさにその序章にありました。
当時の日本経済は右肩上がりの成長を続け、多くの国民が所得の増加を実感していました。このような時代背景の中、クラウンは単なる移動手段としての価値を超え、社会的成功を手に入れた証、いわゆる「アガリのクルマ」として、多くの人々の憧れの対象として認識されていました。トヨタの巧みなマーケティング戦略により、「カローラやマークⅡといった車から社会人人生をスタートし、仕事で成功を収め、家族を持ち、最終的にクラウンのオーナーになる」というサクセスストーリーが、多くの人にとっての理想的な人生の歩みとして描かれたのです。
つまり、「いつかはクラウン」という言葉は、経済成長と共にあった日本人の夢や上昇志向を完璧に捉えた、時代を象徴するフレーズだったと言えます。その言葉には、頑張れば自分も豊かになれるという、未来への希望が満ち溢れていました。
このキャッチコピーが人々の心に深く響いたのは、多くの人が「頑張ればいつか自分もクラウンに乗れるかもしれない」という具体的な目標を持てた、そんなエネルギッシュな時代だったからですね。
クラウンのグレードをランク順に解説
クラウンのグレード体系は、その長い歴史の中で、多様化する顧客のニーズに合わせて細分化されてきました。特に、この記事の主題であるスーパーサルーンとロイヤルサルーンが登場した1970年代以降、その基本的な序列は明確に定義されていました。基本的なグレードのランク順は、以下のようになります。
クラウンの基本的なグレード階層
- ロイヤルサルーン(シリーズの頂点、最高の装備と性能)
- スーパーサルーン(個人オーナー向けの中核、豪華さと実用性の両立)
- スーパーデラックス(法人需要や実用性を重視する個人向け)
- デラックス(主にタクシーや教習車などのフリート需要向け)
この階層構造は、クラウンが純然たる個人向け高級車であるだけでなく、タクシーやハイヤー、官公庁の公用車といった、社会インフラの一部としての役割も担ってきたことの表れです。デラックス系が主に法人向けや実用性を最優先するグレードであったのに対し、スーパーサルーン以上が個人オーナーを強く意識した豪華な仕様となっていました。
そして、そのピラミッドの頂点に君臨したのがロイヤルサルーンであり、クラウンが持つ「日本の高級車」としての絶対的なイメージを決定づける、極めて重要な役割を担っていたのです。
ロイヤルサルーンという名前の由来
「ロイヤルサルーン」という、威厳に満ちた最上級グレードの名称は、1974年に登場した5代目クラウン(S80系)で初めて設定されました。先代の4代目(通称:クジラクラウン)が先進的すぎるデザインで保守的な市場に受け入れられなかった反省から、5代目は「美しい日本のクラウン」をキャッチフレーズに、重厚で直線的なスタイルへと回帰しました。その威厳あるデザインの頂点に立つグレードとして、この名前は与えられたのです。
その名前の由来は、言葉の意味をそのまま解釈するのが最も分かりやすいでしょう。
- "Royal":英語で「国王の」「王室の」「高貴な」を意味します。
- "Saloon":主にイギリス英語で乗用車、特に「セダン」を指します。
つまり、「ロイヤルサルーン」とは「国王のセダン」を意味し、クラウンのラインナップにおける絶対的な頂点、王様であることを示す、非常に格式高いネーミングなのです。この名前を与えることで、トヨタは単なる装備の違いだけでなく、所有すること自体が特別なステータスとなる「格」の違いを市場に明確に打ち出しました。これにより、ロイヤルサルーンは多くの人々の憧れを集める特別な存在となったのです。
スーパーデラックスの歴史的な位置づけ
スーパーデラックスは、クラウンの長い歴史におけるグレード体系を語る上で欠かすことのできない、重要なグレードです。スーパーサルーンやロイヤルサルーンといった、より豪華なグレードが登場する以前の1960年代から70年代初頭にかけては、このスーパーデラックスが実質的な最上級グレードとして、個人オーナーの憧れを一身に集めていました。
しかし、1970年代に入り、オイルショックを経て顧客の価値観が多様化する中で、スーパーサルーン、そしてロイヤルサルーンが設定されると、スーパーデラックスの立ち位置は少しずつ変化していきます。個人オーナー向けの華やかさや先進性という役割を新設された上級グレードに譲り、主に快適装備を備えた法人向け(ハイヤーなど)や、実用性と格式をバランス良く求める個人オーナー向けの中間グレードとしての性格を強めていきました。
言ってしまえば、時代の変化と共に、クラウンの豪華さを象徴するスタープレーヤーの座から、信頼性や快適性を高いレベルで備えた、チームに欠かせない堅実なベテラン選手へとその役目を変えていったのが、スーパーデラックスの歴史的な位置づけと言えるでしょう。
スーパーサルーンエクストラとは何か
「スーパーサルーンエクストラ」とは、その名の通り、個人向けの中核グレードである標準のスーパーサルーンをベースに、より装備を充実させた上級仕様のグレードです。「Extra(エクストラ)」が「追加の」「特別な」を意味することからも、その位置づけが分かります。
多くの人々にとって、最上級のロイヤルサルーンは予算的に高嶺の花でした。一方で、標準のスーパーサルーンでは少し物足りない、もう少しだけ豪華さが欲しいと感じる顧客層も確実に存在します。スーパーサルーンエクストラは、まさにその「あともう少し」という絶妙なニーズを的確に捉えたグレードでした。
「エクストラ」な装備の具体例
具体的には、アルミホイールのデザインが専用のものになったり、内装のシート生地がより上質なものに変更されたり、ロイヤルサルーンに標準装備されるような快適装備(例:オートドライブ、専用オーディオなど)の一部が追加されたりといった差別化が図られていました。これにより、ユーザーは予算の範囲内で最大限の満足感を得られる一台を選ぶことができたのです。まさに、現実的な選択肢の中で、豪華さと経済性を両立させたいユーザーにとって最適なグレードでした。
ロイヤルサルーンとロイヤルサルーンGの違い
ロイヤルサルーンがクラウンの最上級シリーズであることは前述の通りですが、そのピラミッドの頂点には、さらに特別な「ロイヤルサルーンG」というグレードが存在しました。この「G」は、一般的に"Grand"(雄大な、豪華な)や"Gross"(全体の)を意味すると言われ、まさにクラウンの、ひいてはトヨタの乗用車ラインナップの頂点に立つフラッグシップモデルでした。
ロイヤルサルーンとロイヤルサルーンGの最も大きな違いは、搭載されるエンジンや、その時代における最先端の先進技術が惜しみなく投入される点にあります。
ロイヤルサルーンGの主な特徴
- 専用の大排気量エンジン:その時代の最大排気量エンジン(3.0Lや後の4.0L V8など)が専用に設定されることが多く、圧倒的な動力性能を誇りました。
- 最先端のシャシー技術:電子制御エアサスペンションや、電子制御サスペンションTEMS(Toyota Electronic Modulated Suspension)など、最高の乗り心地と操縦安定性を実現する技術が惜しみなく投入されました。
- 最高級の快適・先進装備:本革シートやエレクトロマルチビジョン(ナビゲーションシステムの前身)、後席のパワーシートやオーディオコントロールなど、他のグレードでは選択すらできない最高級の装備が標準で備わっていました。
つまり、ロイヤルサルーンが多くの人にとっての「豪華なクラウン」であるならば、ロイヤルサルーンGは「トヨタが持つ技術の粋を集め、世界に誇ることを目指した日本の最高級車」と言える、別格の存在だったのです。
スペックで見るクラウン スーパーサルーンとロイヤルサルーンの違い
- グレードによる外装の見分け方とは
- ロイヤルサルーンの内装と豪華装備
- スーパーサルーンの快適装備を解説
- クラウンのエンジンをグレード別に比較
- 人気の130クラウン グレードの違い
- グレードで見るクラウン当時の価格差
グレードによる外装の見分け方とは
スーパーサルーンとロイヤルサルーンは、オーナー以外の人が見てもその「格」が分かるよう、外観にも明確な違いが与えられていました。リアのエンブレムを見れば一目瞭然ですが、それ以外にもいくつかの見分けるための重要なポイントが存在します。
中でも最も分かりやすいのは、1987年に登場した8代目クラウン(S130系)以降に設定されたボディサイズの違いです。ロイヤルサルーンシリーズには、当時の小型乗用車枠(5ナンバー)の基準である全幅1,700mmを意図的に超えた、3ナンバー専用のワイドボディが与えられました。一方で、スーパーサルーンの多くは伝統的な5ナンバーサイズに留められたため、両車を並べると、その威風堂々とした風格の違いは歴然でした。
このワイドボディ戦略は、1989年4月に施行された税制改正が大きな追い風となりました。それまで3ナンバー車には高額な物品税が課されていましたが、これが廃止され消費税に移行したことで、大排気量・3ナンバー車への心理的なハードルが一気に下がったのです。(参照:総務省「自動車関係税制のあり方に関する検討会」資料)
その他の主な外装の違い
- Cピラーのエンブレム:Cピラー(後席ドアの後ろの柱)には、王冠マークと共にグレード名を示すエンブレムが装着されており、ここで簡単に見分けられます。ロイヤルサルーンのエンブレムは、より立体的で豪華なデザインが採用されることが多くありました。
- クリスタルピラー:7代目(S120系)のロイヤルサルーン・ハードトップモデルに採用された、Cピラーを光沢のある樹脂パネルで覆った独特のデザイン。これはロイヤルサルーンの象徴となり、特別なモデルであることを強く主張していました。
- モールのデザインや塗装:バンパーやサイドに装着されるプロテクションモールの太さや色、メッキの有無、さらにはボディ下部を異なる色で塗り分けたツートンカラーの設定など、細かな部分で差別化が図られていました。
これらの違いは、オーナーに所有する喜びと優越感を与えると同時に、社会に対してその車の「格」を分かりやすく示す、重要な記号として機能していたのです。
ロイヤルサルーンの内装と豪華装備
ロイヤルサルーンの真価は、重厚なドアを開け、その豪華なキャビンに乗り込んだ瞬間にこそ最も強く感じられます。その内装は、まさに「豪華絢爛」あるいは「走る応接室」という言葉がふさわしい、贅を尽くした空間でした。
まず乗員を迎えるシートの生地には、毛足が長く、しっとりとした極上の手触りを持つベロアや、複雑で美しい織り模様が施されたジャカードモケットといった、当時の最高級素材が惜しみなく使われています。運転席や助手席には、スイッチ一つで最適なシートポジションに調整できるマルチアジャスタブル・パワーシートが装備され、上級モデルではステアリングの位置まで電動で調整可能でした。これもまた、高級車オーナーの特権でした。
さらに、80年代のロイヤルサルーンを特徴づけるのが、未来的で鮮やかなデジタルメーター(スペースビジョンメーター)です。蛍光表示管を用いたグラフィカルな表示は、当時の先進技術の象徴であり、夜間のドライブではドライバーに特別な高揚感を与えました。その他にも、クルーズコントロールや電子制御式のオートエアコン、高音質のオーディオシステムといった快適装備は当然のように標準装備とされていました。
スーパーサルーンの快適装備を解説
一方のスーパーサルーンは、ロイヤルサルーンのような煌びやかさとは少し趣を異なりますが、日本の高級車として十分以上の快適装備を備えていました。
その内装は、派手さよりも質実剛健な高級感、いわば「用の美」が追求されていました。シート生地は耐久性と快適性を両立させた高品質なモケット地が中心で、華美ではありませんが、触感や見た目の質感は非常に高いものでした。メーター類も、視認性に優れ、誰にとっても分かりやすい伝統的なアナログメーターが基本でした。これは、先進性よりも普遍的な信頼性や安心感を重視する、堅実なユーザー層に強く支持された点でもあります。
もちろん、現代の車では当たり前となったパワーウィンドウや集中ドアロック、オートエアコンといった基本的な快適装備はしっかりと押さえられており、日常的な使用において不満を感じることはまずありません。言ってしまえば、クラウンとしての品格や静粛性、乗り心地の良さといった本質的な魅力を保ちつつ、実用性や経済性もバランスさせた、非常に賢明な選択肢がスーパーサルーンだったのです。
ロイヤルサルーンに初搭載された先進装備が、数年後のモデルチェンジでスーパーサルーンにも標準装備、あるいはオプション設定される、という「技術の滝(テクノロジー・カスケード)」戦略は、トヨタの得意とするところでした。これにより、常に新しい技術で上位グレードの魅力を保ちつつ、モデル全体の先進性を高め、顧客の買い替え意欲を促進していたのです。
クラウンのエンジンをグレード別に比較
スーパーサルーンとロイヤルサルーンの「格」の違いを最も明確に、そして物理的に表していたのが、ボンネットの下に収められるエンジンでした。ロイヤルサルーンには、常にその時代のトップパフォーマンスを誇るエンジンが与えられる特権があったのです。
特にそのキャラクターの違いが象徴的だった8代目(S130系)を例に、グレード別の主な搭載エンジンを見てみましょう。
主な搭載グレード | エンジン型式 | 種類・特徴 | 排気量 | 最高出力(ネット値) |
---|---|---|---|---|
ロイヤルサルーンG | 1UZ-FE | V型8気筒 DOHC | 3,968cc | 260PS |
ロイヤルサルーン | 7M-GE | 直列6気筒 DOHC | 2,954cc | 190PS |
ロイヤルサルーン | 1G-GZE | 直列6気筒 DOHC スーパーチャージャー | 1,988cc | 170PS |
スーパーサルーンエクストラ | 1G-FE | 直列6気筒 DOHC(ハイメカツインカム) | 1,988cc | 135PS |
※上記は1989年頃の代表的なエンジンの一例です。年式やモデルチェンジにより、搭載エンジンやスペックは異なります。(参考:トヨタ自動車75年史 クラウン 8代目)
この表からも分かる通り、スーパーサルーンには主に経済性と滑らかさを両立した2.0Lエンジンが搭載されたのに対し、ロイヤルサルーンにはよりパワフルな3.0Lの直列6気筒や、2.0Lながらもスーパーチャージャーで過給することで力強いトルクを発生するエンジンが用意されました。そしてその頂点には、後に初代セルシオ(レクサスLS400)にも搭載され、世界を驚かせた傑作4.0L V8エンジン「1UZ-FE」までラインナップされていました。この圧倒的に余裕のあるパワーこそが、ロイヤルサルーンの他を寄せ付けない静かで滑らかな走りを生み出す、最大の源泉だったのです。
人気の130クラウン グレードの違い
バブル経済の絶頂期に生まれ、その豊かさを体現した存在として、今なおクラシックカー市場で根強い人気を誇るのが8代目、通称「130(イチサンマル)クラウン」です。この世代のグレードの違いを理解することは、スーパーサルーンとロイヤルサルーンの違いの本質を知る上で非常に重要です。その違いは、前述のエンジンや装備に加え、ボディサイズという、誰の目にも明らかな物理的な差異がありました。
当時の日本では、自動車税が排気量だけでなくボディサイズ(特に全幅)によっても大きく左右されていました。全幅1,700mm以下の「5ナンバー」サイズが税制面で大きく優遇されていたのです。130クラウンは、この市場環境に合わせ、5ナンバー枠に収まるナローボディと、それよりもフェンダーを拡幅したワイドボディ(3ナンバー)の2種類をラインナップするという巧みな戦略を取りました。
130クラウンのボディと主なグレード展開
- ワイドボディ(3ナンバー):主にロイヤルサルーンシリーズ専用に設定。大排気量エンジン(3.0L直6や4.0L V8)を搭載するための器でもあり、その堂々とした風格はまさに「憧れのクラウン」を体現する存在でした。
- ナローボディ(5ナンバー):スーパーサルーンシリーズや、一部の2.0Lエンジン搭載ロイヤルサルーンに設定。日本の道路事情に合った扱いやすいサイズと、税制面のメリットが大きな魅力でした。
この物理的な「大きさ」の違いは、それまでのエンブレムや内装といった「知る人ぞ知る」違いとは一線を画し、グレード間の序列を決定的なものにしました。ワイドボディのロイヤルサルーンを所有することは、より多くの税金を払ってでも大きな車に乗るという、当時の価値観における豊かさの、この上ない証明でもあったのです。
グレードで見るクラウン当時の価格差
スーパーサルーンとロイヤルサルーンの間に設けられた明確な「格」の違いは、当然ながら新車当時の車両価格にも大きく反映されていました。再び130クラウンが登場して間もない1989年(平成元年)頃の東京地区でのメーカー希望小売価格を見てみると、その差に驚かされます。
例えば、5ナンバー・ナローボディの「スーパーサルーンエクストラ」(2.0L)が約250万円からであったのに対し、3ナンバー・ワイドボディの「3.0ロイヤルサルーンG」は約420万円、そしてラインナップの頂点に君臨する「4.0ロイヤルサルーンG V8」は、510万円を超えるプライスタグが付けられていました。
単純計算で、スーパーサルーンが2台買えてしまうほどの価格差があったことになります。当時の大卒初任給が約16万円だったことを考えると、その金額がいかに大きなものであったかが分かりますね。
これは単なる内外装の装備の差によるものではありません。前述したエンジン、ボディサイズ、そしてロイヤルサルーンに採用された独立懸架サスペンションといった、自動車の基本性能を左右する根幹部分のコストの違いが、この大きな価格差として表れていたのです。
この価格差こそが、クラウンにおけるグレードの階層を絶対的なものにし、「次はスーパーサルーンからロイヤルサルーンへ」という、人々のステップアップへの憧れを強くかき立てる、最も強力な要因となっていたのでした。
総括:クラウン スーパーサルーン ロイヤルサルーン 違いの本質
- クラウンは日本の成功の象徴でありグレードには明確な階層があった
- スーパーサルーンは手の届く高級感を提供する中心的グレード
- ロイヤルサルーンは最高の技術と素材を投入した最上級グレード
- 「ロイヤルサルーン」の名は「国王のセダン」を意味する
- ロイヤルサルーンGはエンジンも装備も別格のフラッグシップ
- スーパーサルーンエクストラは標準仕様に豪華さを加えたモデル
- 歴史的にはスーパーデラックスが上級グレードの役割を担っていた
- 外観はボディサイズ(3ナンバーか5ナンバーか)が最大の違い
- Cピラーのエンブレムやクリスタルピラーでも見分けが可能
- 内装はロイヤルサルーンが豪華なベロア生地やデジタルメーターを採用
- スーパーサルーンは質実剛健なモケット生地やアナログメーターが中心
- エンジンはスーパーサルーンが2.0L、ロイヤルサルーンは3.0LやV8を搭載
- 人気の130クラウンはボディサイズの違いがグレードの差を明確にした
- 新車価格はスーパーサルーンとロイヤルサルーンGで倍近い差があった
- この違いこそがトヨタの巧みなブランド戦略の核心であった